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第325話 君という鎖12

「うん。全然違うよ。すごく……可愛かった」 さっきまでの祥悟を思い出しながら、智也がしみじみ呟くと、祥悟にぺしんっと頭を叩かれた。 「なんだよ、それ。んじゃいつもは可愛くねえのかよ?」 智也は笑いながら祥悟の手首を掴むと 「そうじゃないよ。いつも以上に可愛かったってことだよ」 「うわ……。つか、可愛いとか、男が言われて喜ぶことじゃなかったし」 祥悟は嫌そうに顔を歪め、ちぇっと舌打ちした。 「可愛いかったし、すごく綺麗だった。それに色っぽかったな。声とか聴いてるだけでゾクゾクしたし、腰をくねらせたりお尻を突き出す仕草も……すごーく愛らしかった」 「ちょ、こらっ、ストップ」 祥悟は焦ったように両手で智也の口を塞ぐと 「も、いい。それ以上は言うな。すっげー馬鹿みたいに恥ずかしいわ、それ」 文句を言う祥悟の目元が薄く染まっている。珍しく盛大に照れているのだ。 ……ふふ。そういう反応も可愛すぎるよ、君は。 完全に身体を繋ぐことで、一線を超えてしまうことで、祥悟と自分の関係が嫌な方に変わってしまうのだけが怖かった。 だが、今のところ、その心配は杞憂な気がする。いや、むしろ、いい変化しか見当たらない。 祥悟の今まで知らなかったいろいろな表情や姿を見れた。そのことが、何よりも幸せだ。 これで深みにハマるというなら、もうとっくの昔に自分はハマってしまっているのだから。 「なあなあ、俺ってさ、実は抱かれる素質ありってことかな?」 悪戯っぽい目をしてこちらに顔を寄せてくる祥悟の鼻先に、智也はちゅっとリップ音をたててキスをした。 「なんだよ、それ。答えになってねーし」 擽ったそうに鼻に皺を寄せ、口を尖らせる祥悟を、グイッと抱き寄せ思いっきり抱き締めた。 ……君が好きだよ、祥。大好きだ。愛おしくて堪らないよ。 口には出せない想いの呪文。 今ここで、吐き出すことが出来たらどんなに幸せだろう。 「正直ね、君の身体はものすごく抱き心地がよかった。何度でも抱きたくなるよ」 「ふーん。そんなにいいのかよ?ゲイじゃねえおまえでも、ハマりそうな感じ?」 腕の中で呟くと、祥悟は舌を出して鎖骨あたりをペロペロと舐めた。 「こら。擽ったいよ」 「俺さ、女だけじゃなくて、結構そっち系の男にもよく誘われんのな。見た目が女みたいだからってのもあるのかもだけど。ひょっとしてそういう方にもモテるたちなのかな?」 ……や。いやいや、それってどういう意味で言ってるの? こんなことを言い出すのは悪い兆候だ。 自分と寝たことで、未知の快感を知ってしまった。 これはまずい。 嫌な予感しかしない。

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