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第334話 君という鎖21

「祥。もうシャワー浴びたの?」 祥悟がシャワーを浴びている間にパスタでも茹でようと用意をしていたら、思ったより早く祥悟が髪をタオルで拭きながら出てきた。 智也が目を丸くして問いかけると、祥悟はまだ濡れている前髪をかきあげて 「ん。ざっと洗っただけ。でもスッキリした。さんきゅ」 新品じゃなくて自分の洗い換えでもいいと言うので、まだ数回しか穿いていなかったトランクスとTシャツを渡していた。 結局あの大きめのシャツは、すぐに汚してしまったから洗濯機行きだ。 やはり少し大きすぎるTLシャツとトランクスだけの姿で、祥悟はスタスタとキッチンにやってきて 「なあ、もうなんか作っちまった?」 「あー。いや、これからパスタを茹でようってお湯を沸かしてたんだ」 「ふーん……。じゃあさ、飯はいいや。俺、そろそろ帰る」 「え……っ」 智也は驚いて祥悟の顔を見つめてしまった。 「え、帰るって、今すぐかい?」 「うん。明日はちょっと遠出するから朝早いしさ。飯はまた今度、どっかで一緒に食おうぜ」 言いながら、祥悟はダイニングテーブルに畳んで置いておいた自分の服を、さっさと身につけ始める。 智也は内心、激しく動揺していた。 ついさっき、甘く激しく身体を重ね合ったばかりなのだ。 予定を早めてそそくさと帰ろうとしている祥悟に、不安が込み上げてくる。 ……さっきの……あまりよくなかった……とか?俺、しつこくしすぎたのか? なんと言ってもセフレなのだ。 抱いて満足させられなかったら、次の機会はないかもしれない。 初めて祥悟と全てを混じり合わせた喜びが、暗い不安にあっという間に萎んでいく。 冷や汗が出てきた。 智也は落ち着け、と自分に言い聞かせながら、ゆっくりと祥悟に歩み寄り 「身体、どう?辛くない?」 さりげなく問いかけてみる。 「んー……やっぱエッチしたあとだし怠いよね。まだおまえのがここに挟まってる感じ、するしさ」 苦笑しながら服の上から自分の尻をぽんぽんと叩く。 機嫌が悪そうには見えないが……油断は出来ない。 「祥。俺もお腹空いてるし、一緒に出るから……どこかで食べて帰るかい?」 あまり必死にならないように、食い下がってみる。 祥悟はくるっと振り返り、こちらの顔をじーっと見て、首を傾げると 「んー……いいや。またの機会にする。じゃあな、智也。これ、洗って返すからさ。ありがと」 微笑みながらきっぱりと言う祥悟に、それ以上反論する勇気はなかった。 しつこくして嫌われたら辛すぎる。 「わかった。じゃ、玄関まで送るよ」

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