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第342話 君という鎖28※
胸もとに顔を埋める仔猫を、智也はぎゅっと腕の中に閉じ込めた。こちらがちゃんと身構えていても、いつもこんな風に不意をつかれてアタフタさせられるのだ。
「ね、祥、君、今夜はここに泊まるの?」
せっかく盛り上がっているのに水を差すようで悪いが、一番気に掛ることをまずは聞いてみた。
「ん~……。泊まるかはわかんねえし。おまえとのえっち次第」
「何か、嫌なことでもあった?」
重ねて問うと、祥悟が顔をあげた。怒っている。眉を寄せ上目遣いにこちらを睨みあげ
「理由、必要?おまえと寝るのに」
一気にピリピリした空気を纏う祥悟に、智也は慌てて首を振り
「いや、そうじゃなくて。ここ、君のマンションに近いから。部屋に戻れないようなこと、何かあったのかな?って」
祥悟は意外そうに目を見張り
「ああ。そういう意味かよ。別に?仕事終わって暇だったからおまえ呼んでみただけだし?」
「そっか」
智也は内心ホッとした。何かまたスキャンダルを起こした……ということではないらしい。
「おまえさ、やなわけ?俺とスるの」
「嫌じゃないよ」
「じゃ、もう黙れよ。ベッド行こ」
なるほど……。と、智也は感心していた。
これが祥悟との新しい関係なのか。
呼び出しに応じて、会えば寝る。
ということは、1度きりではなく今後も祥悟を抱いていいと、合格がもらえたわけだ。
智也は祥悟の脇に腕を差し込み、ぐいっと抱き上げた。
「うわ」
「じっとしてて。ベッドに行くよ」
びっくりしてしがみつく祥悟を抱えて、奥の部屋へ向かうと、大きなベッドにそのまま寝転がした。
今日の祥悟のいでたちは、張りと光沢のある黒シャツと華奢な下半身をぴっちり包み込んだ黒いレザーパンツだ。
真っ白なシーツの上に転がると、細身の身体がいっそう際立つ。
智也は彼の望み通り、上からすかさずのしかかると、大きく開いたシャツの胸もとに顔を埋めた。
「ん…っ」
シャツの間から覗く白い肌にちゅっと吸い付き、舌を這わせる。祥悟は震えるような甘い声を微かに漏らした。
智也は薄手の黒シャツの上から胸の辺りを鷲掴みにして、ちょっといやらしい手つきで撫で回してみた
「んぅ…っん、」
ツルツルした布地の下に小さい尖りを見つけて、指先でその辺りを撫で擦る。祥悟は甘い吐息を漏らしながら、くねくねと身を捩った。
いつから入っていたのか分からない祥悟の官能スイッチ。こちらがその気になった途端に、艶めいた色がいっそう深みを増す。
「ふふ。ここ、感じるの?」
「うっさい…っ」
揶揄うように問いかけると、祥悟はうっすらと染まった目元を手の甲で隠した。
「ダメだよ。ちゃんと答えて?祥。ここ、感じる?」
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