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第3話 キスにムキになりました1
社長が施設から見つけてきた双子の天使は、瞬く間に事務所の稼ぎ頭になった。
歳のわりに大人びた美貌と、まだ成熟しきってない華奢で伸びやかな肢体。身内から溢れ出る人を惹きつけるオーラ。
最近は祥悟の方が背が高くなって、男女の体型の違いが出てきたが、デビューしたての頃は合わせ鏡のようにそっくりだった。
モデルは一見個性的で派手な職業という印象だが、スポンサーの要求に応じて、その商品の良さをアピールする、引き立て役に徹する自在さも求められる仕事だ。
この双子には着る服や装飾品によって、ガラッと印象を変える天性の柔軟さがあった。だから、どのブランドからも引っ張りだこになった。
雑誌やテレビでも取り上げられ、モデルというよりタレントのような扱いを受けている。
事務所では、一年先輩だが地味な仕事が多い智也とは雲泥の差だった。
智也はもともとこの仕事自体に、それほどの野心を抱いているわけではない。
3人兄弟の末っ子で、家業を継ぐ必要性もなく、学校を出てから何となく仕事を探していた時期に、街でスカウトされて始めた職業だった。
いずれなりたい自分の夢への、足掛かりぐらいの気持ちだったのだ。
華やかで派手な活躍をする後輩を、羨む気持ちが全くなかったわけではない。
だが、生意気だけどどこか憎めない愛嬌のある祥悟を、智也は心密かに気に入っていた。
そんな自分の好意に、祥悟も気づいているのだろう。ライバル意識の強い事務所の他の仲間たちに比べると、心を許して無邪気に慕ってくれている……気がする。
(……いや、慕われているというより、懐かれているって感じか。いや……なめられてるっていうのが正しいかもな)
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