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第5話 ムキになったら反撃されました1
余計なところが反応してしまって、智也は焦って唇を離した。顔色を窺う暇もなく、祥悟は智也の腕を両手で掴んだまま、俯いてしまった。
(……しまったな。泣かせたか?)
馬鹿じゃないか。
ムキになって、大人にするような濃厚なキスを仕掛けてしまった。
くそ。失敗だ。
いくら生意気でも、祥悟はまだまだお子さまで……。
「祥……」
項垂れたまま肩を震わす頼りな気な様子に、慌てて顔を覗き込もうとしたら、祥悟がガバっと顔をあげた。
その目にショックの涙は……浮かんでいない。いや、ショックな顔すらしていない。
というかむしろこれは……。
「……っ」
「ふうん……意外」
祥悟は泣いていなかった。
むしろ笑っていた。
艶めいた黒目がちな瞳に、悪戯っぽい色を滲ませて、ひどく楽しげにくすくす笑っている。
唖然とする智也に、ぐいっと顔を近づけてくると、口の端をきゅっと釣り上げ
「キス、上手いんじゃん。智也ってさ、チェリーくんじゃなかったんだ?」
(……っ!? この……クソガキっ)
目を煌めかせながら艶然と微笑み、キスで濡れた自分の唇を指先でなぞって、小首を傾げる。まだ幼さの残る少女めいた顔に、妖しい色気の漂う、誘うような笑顔。
男なのか女なのか、子どもなのか大人なのか、そのちぐはぐでアンバランスな祥悟の表情に、智也の心臓はドキンっと跳ねた。
言い返しもせず固まっていると、祥悟はますます小悪魔めいた表情になり、唇が触れそうなほど顔を寄せてきて
「ね……もっと、キス、しよ。智也のキス、すっげー気持ちいいよ」
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