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第14話 舞い降りた恋4
「ん~……やっぱ俺、これがいい」
祥悟はさんざん悩んだ挙句に、さっきの特大パフェを指差した。
「1人で食べるの?お腹壊すよ。いや、太るんじゃないかな。飯倉さんに怒られるよ」
智也が心配になってそう言うと、祥悟はにやっと笑って
「大丈夫。これぐらいで俺、太んないし。見て、この腹」
祥悟はそう言うと、白いブラウスの裾をぺろんと捲って
「細いでしょ、俺。多分そこいらの女子より、ウエスト括れてるよね?」
思わず見てしまった祥悟の腹は、確かにきゅっと引き締まっている。でも智也が釘付けになったのは、白くて手触りの良さそうな滑らかな肌だった。
智也はちらっと祥悟の顔を窺う。
(このやんちゃ猫、また大人を挑発して揶揄うつもりか?)と思ったが、どや顔して見せる祥悟に、妙な裏はないらしい。
「確かに細いね。ジムとか通ってる?」
智也がさりげなく視線をメニューに戻すと、祥悟は捲りあげた裾を戻して
「別になんもしてないよ?家でストレッチとヨガやってるくらい。俺、痩せの大食いだからさ。体質的に太んないみたい。智也はジムとか通ってんの?」
「うん。たまにね。あ、すいません。このパフェとブレンドひとつ」
通りがかりの店員に注文をして、智也はメニューを閉じた。
祥悟は、店員が持ってきた水をごくごくと一気飲みすると
「はぁ~疲れたっ。あいつら、笑って笑ってってうるさいんだもん。面白くもないのに、そんな笑えるかよっ」
祥悟は自分の頬を両手でぐにぐにして、ぷーっとふくれている。
撮影現場のあの春の妖精はどこにいったんだと、思わず突っ込みたくなる変わりようだ。
智也は微笑んで
「でもすごく良かったよ、君の笑顔。透明感があって、あの香水のイメージにぴったりだ」
祥悟は頬杖をついて、隣の智也を上目遣いにじ……っと見ると
「ふうん……智也にはそう見えたんだ?」
「うん。すごく自然だったな」
店員が、テーブルにコーヒーを置いていく。智也はカップを手に取るとひと口啜った。祥悟は納得のいかないような顔で、ずっとこちらを見つめている。
(……そんなに見ないでくれる?すごく緊張するんだけど)
上目遣いの真っ直ぐな視線が、突き刺さってきてどきどきする。
「祥悟くんはあの仕事、好きかい?」
智也の問いかけに、祥悟はちょっと目を丸くして
「好き?ん~~~……わかんねえ。言われたこと、やってるだけだし?」
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