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第20話 舞い降りた恋10

智也はリビングに戻ると、テーブルの上の雑誌をパラパラ捲っている祥悟に 「本当に何もないんだ。ちょっとコンビニで調達してくる。祥悟くん、飲み物は何がいい‍?」 祥悟はひょいっと顔をあげ、首を傾げると 「別になんも要らないし。喉渇いたら水でいいけど?」 「でも……甘い物とか欲しいよね?」 祥悟はぱちぱちと瞬きをして 「プリンとチョコ」 すかさず即答する祥悟に、智也は微笑んだ。 「わかった。飲み物は炭酸‍?」 祥悟は眉を顰めて 「ジュースは好きじゃない。紅茶がいい。無糖のやつ」 「わかった。すぐ近所だから。テレビでも観て待ってて」 智也は祥悟をそのまま残し、家の鍵と財布だけ持って部屋を出た。 祥悟が喜ぶかもしれないと、あれもこれも、ついいろいろ買い込んでしまった。 智也はコンビニ袋を2つ抱えて、玄関の鍵を開けて中に入る。 リビングのドアを開け、買い物袋をダイニングテーブルに置くと、祥悟のいるソファーに向かって歩きながら 「紅茶、これでよか……」 話しかけた言葉を、途中で止める。 (……うわ……) 祥悟はさっきと同じソファーに居た。でも座ったまま、うたた寝しているのだ。 大きなクッションを抱え込んで、背もたれから肘掛けにちょっとずり落ちたような体勢で、すーすーと寝息をたてている。 さっき、控え室の奥で丸まって眠る祥悟の無邪気な寝顔を見たばかりだ。でも、今の彼はスッピンで、あの時より更にあどけなく見えた。 (……なんだろ……これ……。この子、本当に天使なんじゃないのか?) 智也はじわじわと感動しながら、そーっと祥悟に歩み寄ると、その無邪気な寝顔をじっと見つめた。 10代の少年特有の透き通るような肌。 流し目をすると艶っぽく大人びて見える目は、今は閉じられて長い睫毛が微かに揺れている。 ほんのり紅潮した頬に、うっすらと開いた唇。化粧なんかしなくても、見惚れるほど美しい。 智也はそっと深呼吸すると、音をたてないように静かに後ずさった。 少し離れた位置から、祥悟の姿を眺めてみる。 近いようで遠い存在だった祥悟が、自分の家で無防備にうたた寝してくれているなんて……ちょっと夢でも見ているみたいだ。 本当はもっと間近で見ていたいけれど、視線がうっとおしくて眠れないと可哀想だ。 智也は祥悟にくるりと背を向けると、何か掛けてやるものを探しに、忍び足でリビングから出て行った。

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