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第21話 舞い降りた恋11
よほど睡眠不足だったのか、祥悟はその後2時間近く目を覚まさなかった。智也が掛けてやったタオルケットに包まって、肘掛けを枕に完全に熟睡している。
せっかく家に来てくれたのに、話もせずに貴重な時間が過ぎていくのはなんだか惜しい気もしたが、割と神経質そうな祥悟が、初めて来たこの部屋で、安心しきって眠ってくれるのはちょっと嬉しかったりするのだ。
智也はほとんど自炊はしない。
でも、そろそろ夕飯の時間だ。
(……デリバリーでピザでも頼もうかな)
ダイニングの椅子に座って、祥悟の寝顔を見つめながらしばらく悩んでいた。祥悟はあの調子だと、いつ目覚めるか分からない。
(……パスタなら、目が覚めてから茹でてもすぐ食べられるな。よし。下準備だけしとくか)
智也は立ち上がると、キッチンに向かった。さっき買ってきた袋の中身や、ストック品の棚の中をごそごそいじっていると
「何やってんの?」
不意にすぐ後ろから声がして驚いて飛び上がり、棚の扉の角っこにしたたかに頭を打ち付けた。
「……いって~~~っ」
目から火花が飛び散った気がした。
頭を押さえて蹲った横に、祥悟が慌てて屈み込む。
「ドジ。すっげー音したじゃん。頭、穴開いたかもよ?」
あまりの痛みに悶絶している智也に、祥悟はそっと手を伸ばすと
「冷やす?傷になってんじゃねーの?ちょっと見せてよ」
そう言って心配そうに覗き込んでくる祥悟と目が合って、智也は涙目で苦笑した。
「だい……じょうぶ。少ししたら治まる、と、思う」
思わぬ失態を見せてしまって恥しい。
必死に痛みを堪えて笑ってみせると、祥悟は何故か不機嫌な顔になり
「痩せ我慢、すんなよ。タオル、これ使うよ?」
テキパキと脇の戸棚からタオルを取り出して、水に浸して絞ると頭をそっと押さえてくれた。しばらくそうして冷やしてから、いったん外して傷の具合を覗き込んでくる。
「うっわ。やっぱ傷になってんじゃん。智也、ちょっと立って。こっち来て」
祥悟は痛そうに顔を歪めると、こちらの腕を掴んでダイニングテーブルへと向かった。
促されて椅子に腰をおろすと
「救急箱、ねえの?」
智也はなんだか呆然としてしまって、祥悟の顔をぼんやりと見つめた。
「え……あ、ああ。救急箱。あそこの食器棚。左下の扉開けて……」
祥悟はさっさと救急箱を取りに行くと、手際よく傷の手当をしてくれた。智也は大人しくされるままになりながら、祥悟のやることを黙って見つめていた。
(……びっくり……した……)
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