22 / 349
第22話 舞い降りた恋12
正直、意外だったのだ。
祥悟がこんなに甲斐甲斐しく、傷の手当てをしてくれるなんて。
いつもお姫様然として、姉の里沙や周りの人間に、あれこれと世話を焼かれているイメージが強い。そういう姿が似合っていたから、こんなに手際良く自分の世話を焼いてくれるなんて、思っていなかったのだ。
(……参ったな、俺。今日はサプライズが多すぎて、もう何がなんだか……)
ギャップ萌え……とでも言うのかもしれない。そもそも自分が勝手に思い描いていた先入観と、実際の祥悟が違っていただけなのだろうが、こういうのに自分はとことん弱いのだと気づいてしまった。
なんだか胸のところが……きゅんきゅんしている。
「まだ、痛ぇの?」
声をかけられて、はっとして顔をあげると、気遣わしげに自分を見下ろす祥悟と目が合った。
(……あ……ダメだ。きゅんきゅんだけじゃなくて、またこの辺がドキドキしてきた)
「……祥悟、くん……」
今、自分はどんな顔をしているんだろう。自分を見る祥悟の目に、戸惑いの色が滲んでいる気がするけど。
「な、に……? ……智也、おまえ、大丈夫かよ? 打ちどころ、悪かったのか?」
智也はゆっくり首を横に振ると、怪訝な顔で何故か後ずさり始めた祥悟の肩を掴んで
「いい子だな、君は。……ありがとう」
言いながら、ぐいっと引き寄せ抱き締めた。
「はっ?ちょっ」
驚く祥悟の身体を、更にぎゅーっと強く抱き締めて
「今まで誤解してた。ほんと、君はすごくいい子だ」
驚いて固まっていた祥悟の身体が、じたばたし始める。
「はぁ? おまえ、何言ってんの? つーか、離せよっ馬鹿力っ。気安く、触んなっ」
祥悟はソファーに座りクッションを抱きかかえて、ずっとそっぽを向いている。
智也は、さっき思いっきり蹴りあげられて、まだ痛む脛をさすりながら
「飲まないの? 紅茶。プリンも、あるけど」
遠慮がちに声を掛けてみた。
祥悟の肩がぴくんと震える。ゆっくりと振り向くその顔が、まだものすごく不機嫌そうだ。
「怖い顔、しないでよ。ごめんって言ってるだろう?」
祥悟はますます不信の眼差しで智也を睨みつけて
「あのさ。控え室でキスしたのってさ、ガチだろ?智也ってほんとにゲイなんじゃねーの?」
感激し過ぎて、可愛くて仕方なくて、ついうっかり抱き締めてしまった。さっきから違うと何度も否定しているのに、祥悟はまったく信じてくれない。
……無理もないが。
「違うよ。さっきのは親愛の気持ち。俺、普通に女の子、好きだからね」
「んじゃ、両刀ってことじゃん。……別に、そんな必死に否定しなくていいし?それより智也」
祥悟は急に表情を変えると、クッションを放り出して、身を乗り出してきた。
「あのさ、智也ってさ、初めて女抱いたの、いつ?」
ともだちにシェアしよう!