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第23話 舞い降りた恋13

目をきらきらさせながら身を乗り出した祥悟に、智也は頬を引き攣らせた。 (……うわ。いよいよ、きたか) そもそも、今、祥悟がこの部屋にいるのは、喫茶室でこの話題になって、ひと目のある所でそういう話をしないよ、と窘めたからなのだ。 出来ればすっぱり忘れてくれて欲しかったが、このやんちゃ猫は聞く気満々らしい。 (……弱ったな……。俺、兄貴とだってこっち方面の話ってしたことないんだけどな……) 「それ、聞いてどうするの‍?」 まずは少しだけ、抵抗してみる。 祥悟はまったく怯む様子もなく 「え。いいじゃん、教えて‍? ってか、質問してんの、俺」 「いや、俺の体験談なんて、聞いても面白くないし、参考にならないよ」 もうちょっと抵抗してみる。 祥悟は少し口を尖らせて 「んなの分かってるし‍? 参考に、とか思ってねえもん」 (……あ……そ。じゃあ何故、俺にそれ聞くんだよ) 「祥悟くんはいつだい‍?」 「質問してんの、俺」 好奇心にきらめく瞳でじーっと見つめられて、智也は早々に白旗をあげた。 「……結構遅いよ。19」 祥悟は片眉をあげた。 「へえ。相手、誰‍? うちの事務所の女‍?」 「言わないよ、そんなこと」 「今も付き合ってんの‍?その人と」 「それも内緒」 祥悟はぷーっと頬をふくらませ 「ちぇー。いいじゃん、そんぐらい教えてくれたってさ」 「どうしてそんなの聞きたがるの‍? 何か悩み事かい‍?」 祥悟はアイスティーのグラスに手を伸ばして、ごくごく飲むと 「別に、悩み事っつーか。んー……。あのさ、誰にも言わねえ‍?」 祥悟は急に智也ににじり寄ってきて、下からすくうように覗き込んできた。智也は内心どきっとしたが、必死に無表情を保ち 「ああ。誰にも言わないよ」 「ん。じゃあ智也のこと信用する。あのさ、こないだ、ある人に、付き合ってって言われたんだよね」 (……え……) 「いろいろ教えてあげるから、私と寝てみない‍?ってさ」 (……え……‍?) 「寝るのは別に構わないんだけどさぁ。相手、歳上だし、俺まだ経験浅いしさ。エッチしてみて下手くそ~とか思われたら、癪に障るじゃん?」 (……えーーー‍?) 「智也、さっきのキス、何気にすげえ上手かったし。女歓ばすテクとか、いろいろ知ってんのかな?って思ったんだよね」 智也は絶句して、まじまじと祥悟を見つめた。

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