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第25話 舞い降りた恋15
揺らめく瞳で見つめられて、妖しいおねだりを囁かれて、智也は祥悟を見上げたまま、凍りついたように動けない。
祥悟は上からかがみ込んで、智也の顔を両手で包み込むようにして、もう1度鼻先にそっと唇を寄せた。ほっそりとした指先が、智也の耳や襟足に絡み付いてさわさわと撫でてくる。
(……ちょ……っと、待って、くれ。これ……マズい)
ネコ科の獣が獲物を捕らえる瞬間のような、怖いくらい美しい煌めく瞳。
(……あ……吸い込まれそうだ……)
揶揄うように鼻先を掠めた唇が、ゆっくりと降りてくる。
それは、触れるか触れないかのぎりぎりの所で止まった。
「……ね。キス……しよ」
空気のような微かな囁き。
智也は暗い歓喜にぞくぞくっと震えた。こんな風に甘やかに誘われては、抗えるはずがない。
知らず詰めていた息を吐き出すと、智也は震える手で祥悟の頭をかき抱いた。
その拍子に唇が重なる。
乾いた唇の感触。ふわっと香る吐息。ほんの少し触れただけなのに、きゅーっと胸が締めつけられる。
ふふ……と祥悟が微かに唇を震わせる。まだ開けたままの智也の視界が、濡れて煌めく祥悟の瞳で覆われていく。
「目……閉じてよ」
その声は、重なったままの唇から直接振動して伝わってきた。
その声に操られるように、智也はそっと瞳を閉じる。
再び押し付けられる唇の感触。今度は潤いをたたえて、しっとりと智也の唇を押し包む。
高鳴る自分の鼓動の音だけが、全てを支配していた。閉じた目蓋の裏に浮かび上がるのは、蠱惑的な祥悟の微笑みだけだ。
智也は、かき抱く腕の力を強めた。油断するとスルリと逃げてしまいそうなしなやかな獲物を、この腕の中にしっかりと閉じ込める。
重なる唇がふわっと解けて、甘い熱が流れ込んできた。祥悟の舌先が、ちろちろと誘い込むように蠢く。
智也は小さく呻いて更に口づけを深くした。濡れた粘膜の感触がぞくぞくするほど気持ちいい。唇を割り、奥に逃げ込もうとする舌を追いかける。
祥悟の華奢な身体が、微かに震えた。
歯列を舐め、もっと奥を探り、甘い果汁を滴らせているその熱い舌を絡め取る。
「……んぅふ……っ」
祥悟の鼻からむずかるような声が漏れた。絡め取った舌をちゅくちゅくと吸うと、蕩けるような悦びがせり上がってくる。
(……なんだ……これ。なんだよ……これ)
こんな甘美なキスを、自分は知らない。繋がっているのはごく1部なのに、そこからトロトロに溶けて混じりあっていきそうだ。
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