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第27話 舞い降りた恋17
祥悟はつまらなそうに鼻を鳴らして、智也の手を振りほどくと、膝の上から床に降りた。
離れていってしまう愛しい温もりに未練がましく手を伸ばしかけ、智也はぐっと拳を握り締める。
「やっぱ智也ってお堅いよね。キスはめちゃくちゃ上手いのにさ」
智也は苦笑いして
「ありがとう。そうか、俺のキス、そんなに気に入ってくれたんだ?」
祥悟は元の場所にぽすんっと座り直すと、不貞腐れた顔でこちらを睨みつけ
「はっ。嬉しそうな顔すんな。ちぇ~つっまんねーの」
ぶちぶち言いながら片脚を抱え込み、ぷいっとそっぽを向く祥悟の姿が可愛い。
妖しい呪縛から解放されて、智也はほっと胸を撫で下ろすと
「どうしてそんなに、エロいキスを教えて欲しいの? 好きな女の子を落とす為かい?」
軽い口調で問い掛けると、祥悟はこちらを見て、思いがけずちょっと真剣な表情で
「好きな女なんか、いない」
ポツリと呟いた。
(……え……?)
祥悟の言い方や口調に、いつもと違うニュアンスを感じて、ちょっとヒヤリとした。思わずまじまじと彼の顔を見つめると、祥悟はまたぷいっと目を逸らし
「誰か1人を真剣に好きになるとか、うざいし超めんどくさい。いろんな女と気楽に遊ぶ方が楽しいじゃん」
「ふーん……」
なんだか安易に余計なことは言えない気がして、智也は祥悟から目を逸らした。
さっきとは違う、嫌なドキドキに胸の奥がぎゅっと痛くなる。
『誰か1人を真剣に好きになるとか、うざいし超めんどくさい』
こんな言葉を淡々と口に出来るのは、真剣に恋をしたことがあるからなんじゃないのか?
祥悟の声音は、まだ恋を知らない子どもが、知ったかぶりで言っているのとは違う、妙に意味深な響きがあった。
(……ひょっとして……祥悟くん。君、誰かに辛い片想い、してるのかい?)
口に出して聞いてみたい。
でも聞いてはいけない気がする。
智也は言い出しかけた言葉をぐっと飲み込むと
「祥悟くん、パスタって好きかい?」
がらっと口調を変えて、にこにこしながら問い掛けた。祥悟はこちらを見て、きょとんと首を傾げ
「は? なに、突然」
「さっき俺が台所でがたがたやってたのって、食事の用意だよ。そろそろお腹空いただろう?」
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