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第41話 波にも磯にもつかぬ恋12
「なあなあ、智也。それで、何教えてくれんのさ?」
部屋の探索に満足した祥悟が、無邪気に近寄ってくる。智也は気持ちを切り替えて、祥悟ににこっと笑いかけると
「うん、そうだね。祥は何を教わりたい?」
「んなの、俺に聞かれても分かるわけねえじゃん。智也が教えたいこと、教えてよ」
(……うわ。それはまた……無防備だな。そんなに警戒心なくて、大丈夫? 好きにしていいって言ってるのと同じなんだけど)
智也は内心ドキドキしながら立ち上がると
「じゃあ、まずはシャワーの浴び方、かな」
「へ? シャワーぐらい1人で浴びれるじゃん」
「1人じゃないよ。彼女と一緒に浴びる場合」
祥悟は眉を顰めて、智也をじ……っと睨み
「おまえさ、やっぱゲイだよな? 上手いこと言って、俺のことヤるつもりじゃねーの?」
(……あ。少しは警戒した? でも大丈夫。そんなことはしないよ)
智也は穏やかに微笑んで
「俺が君に教えるのは、あくまで女の子への愛撫の仕方だよ。でも……怖いなら止めておくかい?」
「はぁ? だから、誰が怖いって言ってんだよ。じゃあ、風呂場な」
祥悟はぷりぷりしながら、さっさと浴室に向かった。
(……可愛いよな。プライドつつくとすぐにムキになるし。ちょっと……危なっかしいけど)
智也は苦笑しながら後に続いた。
「なに、してんだよ。触んな」
「まずは服を、脱がせるところからだよ。いいからじっとしてて」
脱衣場の大きな鏡の前で、智也は祥悟を後ろから抱き締めると、耳元に囁いた。
「ムードを高めるなら、こんな風に鏡の前で、まずはキスするといいかもね」
言いながら、祥悟の顎に手を当て自分の方を向かせると、じっと目を見つめた。祥悟は鏡が気になるらしく、ちらちらと目を泳がせている。
「目、閉じて」
少し甘く囁くと、祥悟はようやく視線を合わせ、まだ腑に落ちない顔のまま、だが素直に目を閉じた。
(……うわ……綺麗だ……)
何度見てもため息が出るほど綺麗な顔が、自分の口づけを待って目を閉じている。
長い睫毛にビロードのような肌。
そして小さな紅い唇。
智也は自分の鼓動がドキドキと高鳴るのを感じながら、祥悟の両肩にそっと手を置いた。
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