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第42話 波にも磯にもつかぬ恋13
「ん……っ」
唇ではなく鼻の頭にそっとキスをすると、予想外だったのか、祥悟は少し驚いたようにぴくんっと震えた。続いて、つやつやとした頬に唇を滑らせ、長い睫毛にもそっとキスを落とす。
「……擽ったい。ひとの顔で遊ぶな」
祥悟がぱちっと目を開け、睨みつけてくる。智也はふふっと笑って
「キスは唇にして欲しい?」
「……違うし。なぁ、これってさ、焦らすテクってことかよ?」
「うーん。単に俺の趣味かな。相手の予想外の所にキスすると、びくってなるだろ? その反応が可愛いよね」
「ふーん……?」
祥悟は分かったような分からないような微妙な顔をして、また目を閉じた。
今度は唇にそっと触れるだけのキス。
先日知った意外と柔らかい祥悟の唇の感触を、ちゅっちゅっと啄むようにしながら楽しんでみる。キスを重ねる度に、祥吾の紅い唇がうっすらと開いて、逃げる智也の唇を追うような動きをみせ始めた。
(……なるほどね。これってやっぱり焦らしテクなのかな)
本当は、ひとに教えるほど経験豊富なわけじゃない。単に自分のやってみたいことをしているだけだ。
何度かそうやって浅いキスを繰り返すと、薄く開いた祥悟の唇から、ふぅっと吐息が漏れた。
智也は祥悟の華奢な身体を抱き上げて、洗面台の上に腰かけさせる。狭い台の上で不安定な体勢になったせいか、祥悟はこちらの腕にぎゅっとしがみついた。
「……キスは感じる?」
耳に唇を寄せて囁くと、祥悟はん……っと呻いて
「わ……っかんね、それ、擽ってぇって」
「ふうん。……じゃあここは?」
柔らかい耳朶をぺろっと舐めて唇ではみはみすると、祥悟はんく…っと小さく呻いて、もじもじと身を捩った。
「敏感だね、祥。ここ、感じるんでしょ」
わざと息を吹きかけながら、耳朶に歯をたてて甘噛みする。
祥悟の吐く息が甘さを増した。
そのまま、首筋へと舌を滑らせ、感じやすい場所を探る。
祥悟は微かに喘ぎながら、こちらの頭をかき抱いた。
首筋から鎖骨の窪みの辺りまで、舌先を滑らせていく。
真ん中の窪み辺りにあるファスナーのスライダーを口に咥えて、ゆっくりとおろしていった。
黒いレザーの隙間から、徐々に現れる滑らかな白い肌のコントラストが妙に艶かしい。体臭混じりの淡いコロンの香りが、智也の鼻先を擽った。
(……わ。なんだろ、これ。ちょっと……クるよな)
思いつきで口でファスナーを下ろしてみたけれど、なんだかすごく背徳的な感じがする。
半分以上下げて、肌蹴た白い胸に小さな尖りが見えた瞬間、どきっとした。
それは間違いなく少年の胸で、女の子のような丸みも膨らみもない。それなのに、ぷつんと飛び出た小さな粒が淡いピンク色をしていて、ちょっとくらっとくる位、いやらしく見えた。
智也は咥えていたスライダーを離して、じ……っとその尖りを見つめた。男の乳首なんか自分ので見慣れているはずなのに、祥悟のそれは全然、違うものに見える。
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