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第44話 波にも磯にもつかぬ恋15
洗面台の狭いスペースに座る不安定な体勢から解放されて、祥悟はほっとしたように小さなため息をついた。浮かべる表情にも、さっきまでの少し戸惑ったような頼りなさは消えて、いつもの不遜な雰囲気を取り戻している。
「で? 次はどうすんのさ」
「うん。シャワー浴びるからね。服、全部脱ごうか?」
智也はそう言って、祥悟の中途半端に腕に引っかかったシャツの袖を抜いてやる。ほっそりとした上半身が全て剥き出しになった。
「マジで一緒に、シャワー浴びるのかよ?」
「嫌かい? だったら別々でもいいけど。ただ、それだといろいろ教えられないよ」
祥悟はこちらをじと……っと見上げて
「智也ってさ、女抱く時はいつも、さっきみたいにしてんの? エロいことしながら服、脱がせたり?」
(……いつもって……。女抱いたことないんだけどね。っていうか普通は服って、こんな風に脱がせたりしないのかな?)
「うーん。どうだろ。相手にもよるかな? でも非日常なことすると、ちょっと興奮したりしない?」
祥悟はきょとんと目を丸くして
「非日常なこと……? ふーん」
「鏡の前で少しずつ服脱がせたりって、ちょっと恥ずかしくて変な気分になったりするよね? もちろん、相手がそういうの、本気で嫌がってたら、逆効果だけど」
祥悟はちらっと鏡を見て
「……わかった。じゃ、下も脱ぐのな?」
(……いや。それって物分りよすぎだよ、祥。もう少し抵抗した方がいいと思うけど)
曖昧な説得にあっさりと納得してしまった祥悟に、智也は心の中で突っ込みを入れた。
「脱がせてあげる。おいで」
素直に近寄ってくる祥悟をふわっと抱き締めて、上とお揃いの革のパンツに手を伸ばす。
祥悟のお尻は上半身同様、かなり華奢だ。伸縮性のないぴたっとしたパンツに包まれた、小さな尻に両手を当ててみる。
(……うわ。小さいな……)
こちらも間違いなく少年の尻で、女の子のような丸みもボリュームもない。きゅっと引き締まった形のいいお尻は、智也の両手にすっぽりとおさまるサイズだ。
(……これ、すっごくソソられる)
女の子相手には感じたことのない感覚。自分の性的指向は間違いなくこっちなのだと、改めて自覚してしまった。
「祥はその年頃のモデルとして、本当に理想的な体型だね。無駄な肉なんか全然ないし、手足も長くて綺麗な形してる」
言いながら、どさくさでパンツ越しにさわさわとお尻を撫でると、祥悟は擽ったそうに身を捩って
「んーそういうもん? まあ、何着ても似合うって言われるけどさ………っつか、触んなって。キモい」
「気持ち悪い? お尻も立派な性感帯だよ。この辺、触られると変な気分にならない?」
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