45 / 349
第45話 波にも磯にもつかぬ恋16
引き締まったお尻の小さな丸みの感触を、両の手の平で少し楽しんでから、智也は指をつつーっと上に滑らせた。薄い布製越しに腰から尾てい骨付近を、繰り返し撫でていく。
「ん……っ。なんか、擽ったい……っつーか……ぞわぞわ、するって」
祥悟はもぞもぞと腰を揺らし、シャツをぎゅっと掴んできた。
「ああ。擽ったい場所ってね。開発すると性感帯になるらしいよ」
「ばかっ、ちょっ、そこ、触んな。なんか……ヤバいって」
尾てい骨付近の割れ目の始まり辺りを撫でると、祥悟はもじもじしながら上擦った声をあげた。
(……ふうん。ここ、感じるのか。祥ってやっぱり猫みたいだな)
昔、実家で飼っていた猫が、こんな風に尻尾の付け根辺りを撫でると、発情して甘えた鳴き声をあげた。祥悟もそこが弱点らしく、悪戯から逃れようと必死に身を捩っている。
「変な感じに、なってきた?」
「んっ……やめ……んぁ」
「ふふ。いい声出てるね」
揶揄われるのが悔しいのか、祥悟はきゅっと口を引き結んだ。でも、漏れ出る声を必死に押し殺している表情は、余計に可愛くてそそられてしまう。
(……俺ってもしかして、結構Sっ気あるのかな)
Sで女王様気質はむしろ祥悟の方だと思っていたが、意外と逆だったりするのかもしれない。
「……服っ、脱ぐ、んだろっ。いつまで、やってんだよ……っ」
しつこくいじめ続けると、とうとう祥悟が怒り出した。シャツをぎゅっと握り締めながら上目遣いにこちらを睨む目が、少し潤んでいる。
「あぁ。ごめんごめん」
智也は名残惜しい気持ちで手を離すと、パンツのホックを外した。そのままファスナーをおろしてやろうとした手を、祥悟ががしっと掴む。
「自分で、する」
祥悟の目が完全に怒っている。
ちょっと調子に乗りすぎたらしい。
智也は素直に手を離すと、くるっと祥悟に背を向けて、自分も服を脱ぎ始めた。
正直、一緒にシャワーを浴びるなんて、祥悟が許すわけないと思っていた。祥悟が我に返って、途中でやっぱり止めると言い出すのを、待っているのだ。
いくらいろいろ教えてやるという口実でも、男同士でエロいことするのを前提にシャワー浴びるなんて……普通に考えたらおかしい。
でも、いつまで経っても、祥悟の方がギブアップして来ないから、止めるタイミングが分からない。
(……いいのかな。本当にこのまま裸になっても)
躊躇いながら、上のシャツを脱ぎ捨て、ジーンズのボタンを外した。祥悟の可愛い反応にそそられて、実は少し……勃っていたりする。
「脱いだぜ。先、入ってるからな」
相変わらずちょっと怒ったような祥悟の声に、はっとして振り返ると、祥悟はパンツも下着も脱ぎ捨てて、こちらに背を向け浴室の扉を開けていた。
(……うわ……っ)
見てしまった。祥悟の綺麗なお尻を。
ダメだ。ちょっとくらくらする。
ぼーっと見蕩れている智也を残して、祥悟の白い肢体がドアの向こうに消えた。
(……え。本当に……浴びるの? 一緒に? え……いいのか?)
プライドをつついて、わざとムキにさせて、どさくさでお尻まで触らせて貰った。
もう充分過ぎる。
裸で一緒にシャワーなんか浴びたら……
智也は、下着をゆるく押し上げている自分のものを、じっと見下ろした。
(……我慢……出来るかな。襲っちゃいそうな……気がするんだけど)
ともだちにシェアしよう!