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第59話 波にも磯にもつかぬ恋30※
「ね、キスマークは、ダメだよ、祥。撮影が、あるんだから」
抗議する声が掠れた。祥悟は、はっとした顔になり
「あ……そっか。そうだよな、ごめん。んじゃさ、吸うのはなしな。舐めてみる」
(……いやいや。そういう……ことじゃなくて……)
にかっと笑って、祥悟がまた首筋に齧りついてきた。
生暖かい息を吹きつけた後、今度はまるで仔犬のように舌でぺろぺろ舐めてくる。エロい舐め方というよりは擽ったくて、智也は思わず笑いながら首を竦めた。その反応が気に入らなかったのか、祥悟はむくっと顔をあげ
「なにそれ。気持ちよく、ねーのかよ?」
横目で睨みつけてくる祥悟の、拗ねた顔が可愛い。智也は苦笑して
「それだと仔犬とか仔猫みたいだから。もっとね、舌が触れるか触れないかって感じで、つつーって舐めるんだよ」
祥悟が微妙な顔をして、首を傾げる。智也はすかさず祥悟の身体を抱き締めたまま、反転させた。
「うっわ……っ」
祥悟の身体をシーツに転ばせ、その上からのしかかって
「教えてあげる。エロい、舐め方」
ようやく形勢逆転だ。
智也は祥悟が我に返る暇を与えず、低い声で囁くと、祥悟の首筋に顔を埋めた。
両手首を掴んでシーツに縫いつけ、微かに甘い香りのする祥悟の首に、唇をそっと落とす。そのままつつーっと肌の上を滑らせ、舌をちろっと出して、浮き出た筋に沿って、なぞるように舐めていく。
「……っん……っぅ……」
時折揶揄うように止まって唇で軽く吸い、またつーっと舌を滑らせてみる。祥悟はその度にぴくぴくと胸を波打たせ、シーツにもじもじと足を擦りつけていた。
声を出すまいと堪えているが、どうやら感じているみたいだ。
(……ふふ。敏感だな)
押し倒されて、危うく立場が逆転しかけたが、華奢な祥悟を全身で組み伏せば、そう簡単に逆転は出来ない。
さっき首筋に吸いつかれて、まずい所がまた反応しかけた。
本当にこの魅惑的な仔猫は、人を煽る天才だ。
「どうだい? 祥。感じるだろう?」
「ん……っぅ……わか……ったから、手、離せよ」
「乳首じゃなくても、君、感じやすいね」
揶揄うような言葉に、祥悟はちぇっと舌打ちして
「もういい。智也のばか。重いから、どけよ」
智也は少し身体をずらしてやった。
「怒った?」
「怒ってねーし。でもなんかムカつく」
「どうして?」
「だってさ。俺ばっか感じさせられて、智也は平然としてんじゃん? 俺また勃ってんのに、おまえは何ともねーのかよ?」
(……うーん……。何ともなくは、ないんだけどね)
風呂の後、祥悟に悟られないように抜いたのに、祥悟の意外な行動に煽られて、またすっかりその気になっている己の股間がなんとも情けない。
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