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第60話 波にも磯にもつかぬ恋31※
「いや。何ともなくはないよ」
苦笑する智也に、祥悟はますます不貞腐れて
「……その余裕ある感じが、めっちゃ、ムカつく」
「じゃあ、俺が勃ってた方が、いいの? 祥は。この状況で俺がその気のある人間なら、君、貞操の危機だよね?」
智也がそう言って覆い被さって顔を覗き込むと、祥悟は一瞬目を見張り、片眉をくいっとあげて
「突っ込まれんのは、やだ。でもおまえ、勃ってんの、見てみたいし?」
(……この、負けず嫌いめ)
智也ははぁっとため息をつくと
「我が儘だね、君は。……いいよ。じゃあ見せてあげる」
智也は祥悟の手を離して起き上がると
「ほら。君とおんなじだよ」
スラックスの前を押し上げている自分の股間を指差した。祥悟はむくっと身を起こし、こちらの下腹をじ……っと見つめて
「ふーん……やっぱ、勃ってんじゃん」
言いながら手を伸ばしてくる。智也はその手をパシっと掴んで押し止め
「こら。触るのはだめ。我慢出来なくなったらどうするの?」
本当は、祥悟に自分の興奮の証を服の上から見られるだけでも、内心激しく動揺している。ポーカーフェイスを保つのが、苦しいくらいに。
祥悟は、智也の手を捻るようにして振りほどくと
「智也の、デカそうだよね。ちょっとだけ……触らせてよ。服の上からでいいからさ」
(……いや、だから、君って好奇心旺盛過ぎるからっ)
「だ……ダメだよ。あっ、こらっ」
智也がもう1度、手を掴んで制しようとするより先に、祥悟の手が下腹に触れた。
(……っっっ)
祥悟は獲物を見つけた猫のような目で、股間を見つめながら、細い指を膨らみに押し当てた。
「うっわ……やべぇ……おまえの、デカすぎ」
感心したように呟いて、無邪気に服の上からさわさわと撫でる。智也はビクッと震えて、祥悟の手首を掴み締めた。
(……触る、とか、なしだからっ)
「祥……っ。だめ。それ以上、いたずら、すると……」
智也に股間から手を引き剥がされて、祥悟は不服そうな顔で智也の顔を睨みあげ
「おまえさ、ズルすぎ。俺が感じてんの見て、すっげー楽しそうだったろ? 俺だっておまえのそーゆー顔見たいし?」
「だめ。君、女の子、感じさせたいから、教えてって言ったでしょ? これじゃ、完全に脱線してるよね?」
祥悟は腑に落ちない様子で首を傾げ
「んー。じゃあさ、これはオマケ。なんてーの? えっと、課外レッスン?」
(……こらぁ。何言ってるの、この子)
「そんな、余計なオプション、つけなくていいから」
正直、泣きたくなってきた。食い下がる祥悟の無邪気さにも、自分が陥っている予想外の苦境にも。
「俺、男のこれなら気持ちよくする自信あるし? 自分にもついてるからさぁ」
そう言ってご機嫌に笑う祥悟に、智也はだんだん腹がたってきた。
(……人の気持ちも、知らないで)
「そんなに言うなら、気持ちよくしてくれる? 俺のここ」
半ばヤケクソになって、祥悟の手をぐいっと引っ張り、自分のそこに押し当てると
「イかせてみて? 君の、テクで」
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