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第65話 甘美な墓穴のその先に5

隣で無邪気に寝息をたてている祥悟の顔を、智也はそっと横目で見つめていた。 あれから、もっとすごいテクを教えろと無茶振りしてくる祥悟を、宥めすかしてもう1度浴室に連れて行った。 シャワーを浴びて、スッキリした様子の祥悟は、こちらがシャワーを浴びている間に、ベッドに横になり、うとうとし始めていた。 智也がベッドに近づくと、眠そうな目を半分開けて 「もう、続きやんねーの‍かよ?」 不満そうに拗ねてみせたが、眠気の方が勝るのだろう。トロンとした表情の祥悟に、智也は優しく笑いかけて 「おやすみ。もう良い子は寝る時間だよ。また今度、もっといろいろ教えてあげるからね」 祥悟はむすっとした顔で、黙ってこちらを睨んでいたが 「ふん。良い子じゃねーし。つまんねーの」 吐き捨てるようにそう言うと、ぷいっと壁の方を向いて、布団を頭から被ってしまった。 ベッドの上の布団の盛り上がりが、やがて規則正しい上下を繰り返すまで、智也はソファーに座って、雑誌を見ているフリをしていた。 あれ以上、祥悟に触れていたら、どうにもならないところまでいってしまっただろう。 自分の中から込み上げてくる激情を、上手くコントロール出来るほど大人じゃない。 この部屋に来てから、祥悟が惜しみなく自分に魅せてくれた、いろいろな姿を思い浮かべてみる。 キスの感触。 甘い吐息。 まだ少年っぽさの残る、でも恐ろしく綺麗な身体。 可愛い胸の尖り。 甘やかな喘ぎ。 感じてうっすらと染まる肌。 そして、青い花芯を口に含んだ時の、泣きたくなるような歓喜……。 (……可愛かったな……。ほんと、夢みたいだ) 両手を持ち上げ、自分の手のひらを見つめてみる。この手の中に、舞い降りてきてくれた愛おしいぬくもり。 大切にしてやりたいと、心の底から思う。こんなにも愛おしい存在と出逢えた自分は幸せだ。 君を愛していると伝えるのは、もっとずっと先でいい。大人になった祥悟が、自分の気持ちを受け入れてくれる可能性があったら、その時でいい。 今はこうして密やかに想い続けるだけで、こんなにも心は満たされるのだから。 「祥……ありがとう」 智也はそっと呟いて微笑むと、立ち上がってベッドの方へ行った。拗ねたように壁の方を向いていた祥悟は、寝返りうったのか、いつのまにかこっちを向いて無邪気な寝顔を見せている。 ベッドをきしませないように、そっとそっと隣りに横たわった。 1人分以上の間を開けて、静かにただ愛しい天使の寝顔を見つめる。 初めて祥悟と一緒に過ごす夜は、信じられないくらい甘くて……そしてせつなかった。

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