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第101話 甘美な拷問9※
2つの昂りを合わせて、同じ頂を目指す。
手の中ではち切れそうに膨張したそれは、鈴口からとろりとした蜜を溢れさせていた。それが濡れ広がって、くちゅくちゅといやらしい水音をたてる。
「あ……あぁ……ああっ……ぁ……」
祥悟の腰の揺れが、自分と同じリズムを刻んでいた。喘ぐ声にも切羽詰まった甘さが増していく。
……もう、無理だ。出る……っ
智也がぎゅっと目を瞑り、意識を全て集中させようとした時、握る自分の手に祥悟の手が重なった。
はっとして目を見開くと、蕩けそうな表情の祥悟がうっとりとこちらを見ていた。
「んっはぁ……手、俺も……っ」
智也はすかさず手を離し、祥悟の手のひらでそれを包むようにして上から手を重ね合わせた。
祥悟の手が、直接自分にふれている。
……ああ……っすごい……っ
智也は堪えきれずに大きく喘ぐと、祥悟の手ごと動きを速めてラストスパートをかけた。
「……っくぅっ」
「んぁ……っあ……っ」
ぶわっと身体が宙に浮いた気がした。全身の毛穴が一気に開き、一瞬、目の前が真っ白になる。
ほぼ同時にのぼりつめ、膨らんだ先端が弾けて灼熱が迸った。
……っ。溶けるっっ
身体も意識もどろどろになって、噴き出す白濁と一緒に溶けて流れていきそうだった。
がくがくと痙攣して仰け反り、後ろに倒れ込みそうになる祥悟の身体を、咄嗟に掴んで強く抱き締めた。
潮が引くように放出の悦楽が去っても、智也の興奮は冷めないままだった。時折ひくつく祥悟の身体をしっかりと抱き締め、乱れた息を整える。
このまま先に進みたい。
もし祥悟が許してくれるのなら、ずっと秘めてきた彼への思いを打ち明けて、心も身体も……ひとつになりたい。
祥悟はもう二十歳だ。
出逢った頃の高校生ではないのだ。
まだまだ、1人前の大人とは言いきれないが、社長の家から出て一人暮らしを始めることの出来る、つまりは自分の意思で人生の選択が出来る歳になったのだ。
もし、君が好きだと告げたら、祥悟はどんな反応をするのだろう。
祥悟はゲイではない。
でも……こんな行為をしようと誘うくらいには、自分に心を許してくれている。
最初は、やはり抵抗があるかもしれない。
でも、祥悟にマイノリティに対する偏見がないのは、これまでずっと側にいたから知っている。そういう感情を向けられることを、彼が許すかどうかは……分からないけれど。
嫌われて側にいられなくなるのが辛すぎて、ずっと打ち明けられずにいた。
でも……この機会を逃したら、またずっと秘めたままの思いを引きずって、彼が他の誰かと親密になっていくのを見守るだけになる。
智也はそっと息を吐き出すと、抱き締める腕の力をゆるめた。
ありったけの勇気を振り絞って、今、祥悟への思いを打ち明ける。
もたれかかっていた祥悟の身体が、自分から離れる。口を開こうとした時、祥悟の身体がゆらっと揺れて、そのまま後ろに倒れそうになった。慌てて、腕を掴んで引き寄せ、顔を覗き込む。
祥悟は、すよすよと寝息をたてていた。
すごく気持ちよさげに、穏やかにほんのりと微笑みを浮かべて。
智也は、開きかけた口を力なく閉じた。
そっと抱き寄せると、祥悟は再び自分にもたれかかり、むにゃむにゃと小さく何か呟いて、またすよすよと寝息をたて始める。
智也は、ぎゅっと目を瞑り、祥悟の身体を優しく抱き締めた。
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