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第141話 硝子越しの想い18
「そうだね……。俺は、祥悟のことが、すごく好きなんだよ」
今まで、誰にも打ち明けたことのなかった想い。
瑞季の遠慮のない、だがとてもシンプルで真っ直ぐな言葉に、智也はどこかほっとした気持ちになっていた。誰にも知られてはいけないと、ずっと1人で抱え込んできたから辛かった。瑞季の問いかけに、今は素直に答えたい自分がいる。
瑞季が胸から顔をあげて自分を見上げてくる。その黒目がちの大きな瞳に、智也は少し照れたように笑いかけ
「初めて会った時からね、彼は俺の天使だったんだよ。一目惚れ……っていうのかな。あれからずっと……祥悟のことが好きなんだ。絶対に叶わない片想いだけどね」
瑞季はちょっと眉を寄せ、何か言いたそうに口をもごもごさせた。
智也は瑞季の頭をもう一度優しく撫でると、背中を抱いてソファーに向かう。並んで腰を下ろし、ふう……っとため息をついた。
「祥悟さんと、初めて会ったのっていつ?」
「4年前……かな? 俺が21で祥悟は……今の君と同じぐらい。双子の姉と一緒に撮影用の衣装を着ていてね、最初、俺は彼を……女の子と間違えたんだ」
瑞季は目を見開いた。
「わ……。それ、祥悟さん、すっごく怒ったでしょ」
智也は苦笑して
「うん。怒ったね。あんた近眼?どこ見て言ってんの?俺は、お・と・こだ。……ってね」
瑞季はくすくす笑い出し
「あー……それ、なんか想像つく。すっごい祥悟さんっぽい」
智也もつられてくすっと笑った。
「うん。彼らしいよね。祥悟はそう言って姉と顔を並べて……笑ったんだ。とても艶やかに華やかに。あの笑顔に……俺は捕まってしまった。初恋だったよ。もうずっと……囚われ続けているんだ。ずっとね」
「ふーん。初恋かぁ。ふふ。智くん、可愛い」
「はは。おかしいだろう? 君よりずっと歳上の俺が、こんな話なんて」
「全然おかしくなんか、ないよ」
瑞季はぶるぶると首を横に振って
「智くんの大切な想いなんだよね。話してくれて、僕は嬉しい。……ね、智くん。智くんは……その……自分がゲイだってこと、いつ自覚したの?」
「うーん……。祥悟に恋するまで、俺はわかってなかったかな。ずっと、自分は奥手だと思っていたからね」
「じゃあ、祥悟さんを好きになって、初めてわかったんだ?」
智也は頷いて、少し遠くを見つめた。
そう。自分がゲイだと自覚したのは、祥悟を好きになったからだ。双子の……瓜二つの姉の里沙ではなく、自分が心を鷲掴みにされたのは、弟の祥悟だった。
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