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第2話 坂本【職業:格闘家、ときどき下僕】
ピンヒールに着いた男の精液を綺麗に舐めとってもらいながら俺は長椅子に腰掛けていた。男は拘束を解かれ、バスローブを羽織っている。室内の照明は明るくなり、プレイが終わって解放感が漂っている。
「坂本さんすごい久しぶりだったよね」
「いや~ずっと来たかったんすけど海外で試合があってなかなか顔出せませんでした」
「そっかぁ。じゃあ仕方ないね。でもちゃんと呼んでくんないと俺拗ねるからね♡」
「あ、亜巳様に嫌われたら俺死ぬんでまたすぐ連絡します!」
そうやって必死に頷く男は大型犬が尻尾を振ってるようで不思議と可愛く見える。
坂本はプロの格闘家だ。190cmを超す長躯は筋肉に覆われてまるでローマの剣闘士さながらだ。そして整ってはいるが他人を圧倒する類の強面。ちょっと本気を出されたら俺なんてソッコーでボコボコにされちゃうんだけど、彼の本性は俺に虐められて喜んでしまうM気質だった。
「あ、そういえば坂本さんにまたアレお願いしたいんだよね」
「勿論良いですよ!いつですか?」
「来週金曜の夜って空いてる?」
「あ、はい。空いてないけど空けますね!」
「ありがと助かる♡ホントいい子だね~」
俺はシャワーを浴びて半乾きの坂本の頭をワシワシと撫でた。大男は跪いたまま俺の手を取って頬ずりし、恍惚とした表情を浮かべる。
「俺、亜巳様のためなら何でもします。愛してます亜巳様…はぁ可愛い…いい匂い…」
「いやそれマジの犬じゃん」
俺の手を握りしめて匂いまで嗅ぎ出した坂本につい噴き出してしまう。ほっそりした手首は坂本の大きな手で握りしめでもされたらすぐに折れそうだ。
「それじゃあ詳しいことは後で連絡するから」
「はい!今日はありがとうございました」
俺は使った道具をサッと鞄に収めて一本電話を入れ、上着を羽織るとホテルの部屋を後にした。
エントランスを出たところでアウディA8が待っていた。助手席に乗り込み報告する。
「金曜日でいけます」
「そうか、では準備する」
男が応え、黒塗りの車体が滑るように発進した。
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