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第4話 高校時代〜いじめの矛先が俺に〜
あれは高校2年のときだ。クラスに気が弱くていじめのターゲットになってる奴がいた。そこまでひどくはなかったし、俺はそいつと話したこともなかったから周りと同様に見て見ぬふりをしていた。
ただ、あるときそいつへの嫌がらせでぶちまけられたジュースが俺の鞄にまではねてシミを作ったんだ。それで俺もカチンときて、いじめの主犯格のやつに抗議した。
「いつまでもガキくせーことやってんなよ」
こんな感じでちょっと言っただけなんだけど、俺の見た目が名前通り女みたいだってのもあって言われた奴がすげー怒ったんだ。それでそこからいじめの矛先が俺に向かうようになった。
元々ターゲットだった奴は解放されてホッとしてたな。
とはいえ、俺はそんなにやわじゃない。
顔も名前も女みたいだし背も低いが気だけは強かった。この見た目だから小さいときからさんざん舐められてきたし、子供の頃は変なおっさんやらお兄さんやらに追いかけ回されたり物陰に連れ込まれたこともある。でもそういうピンチをくぐってきてるから意外と要領は良かったんだ。逃げ足速いしな。
そんなわけでいじめ行為も軽く受け流してなんとか学校生活を送れていたんだ。
そう、あの日までは…。
その日は所属してる放送部のコンテストに向けて、撮影した映像の編集作業のために学校に残っていた。最初は3人で作業していたけど、先に2人が帰って俺は1人になった。画面を睨んでいてふとペンを探したがペンケースを教室に置きっぱなしにしてたのに気づいた。
「あーあったあった。」
教室の机の中を探るとペンケースと一緒に引っ張られて丸めた紙屑がいくつか床に落ちた。いじめグループによる嫌がらせだ。拾い上げた紙屑を開くと「死ね」とか「おとこおんな」とか書いてある。
「ほんっとくだんねー」
紙屑をゴミ箱に捨てて廊下へ出ようとしたときドアから女子生徒が現れた。伊藤っていうスクールカーストまあまあ上の方の女子だ。たしか男子バスケ部かサッカー部の誰かと付き合ってる…という程度の認識。無言ですれ違おうとしたとき
「大門ちょっといい?」となぜか止められた。
「あのさ、大門って彼女いるの?」
「……いないけど何?」
「ふーん」
はあ?なんだこいつ。行っていいかな、いいよな。
「じゃあ、おつかれ」
「あ、待ってよ!」
俺は訝しげに伊藤を見つめる。目線の高さ同じくらいだな。
「あのさ、私結構大門いいなって思ってるんだよね」
「はあ?」
「可愛い系男子っていうか。肌きれいだよね」
「それはどうも…話それだけなら俺行くわ」
「待って待って!ちがうんだ、あのさ~大門から見て私どうよ?」
なぜか知らないが伊藤は顔を赤らめて俯いてる。片足をぶらぶらさせるのに合わせてブラウンの長めの髪が波打つ。え…面倒くさいしお前なんて知るかよ。
「はあ、いいんじゃないの。可愛いし」
「ほんと?!え、じゃあ付き合っちゃう?!」
………はい??????
「いや、は???伊藤たしか彼氏いるよな?」
「え~~…啓介ねえ~…もういいわ。別れるし」
「そうなんすか」
「なんで敬語よ。で、どう?付き合う?」
「いや…俺伊藤のことあんま知らないし」
ごめんだけど、と廊下に出ようとしたら手首を掴まれた。おっと、さっきとは全然違って怖い顔してるじゃん。
「待ってよ。私にここまで言わせてそのまま帰れると思ってんの?」
「え…だってどうしろと??」
「童貞のくせに生意気なんだよ!」
ひー!俺今壁ドンされてんですけど~~!まあ童貞なのは当たってるけどさ。JKがそんなこと言っていいの?大丈夫これ??えーーーー女こわ!
と思っているうちに伊藤は俺のスラックスのチャックを下ろし始めた。しかもいつの間にか伊藤のブラウスのボタンがほぼ外れてブラジャーが見えている。いやいやいや!だめでしょそれは。キャー俺襲われる~!?
ここ教室だしドア開けっぱだし窓から校庭丸見えだし!
俺が「やめろって」とグイッと肩を押すと伊藤はよろめいて尻もちをついた。ガタっと椅子に当たり「きゃ!痛った!!!」と声を上げる。やべ、男じゃないんだった。襲ってくるのはいつも男だったからつい力加減を間違えた。
「悪い…」そう言って助け起こそうと手を差し伸べたとき。
「おい!何やってるんだ!!!」
男子生徒の怒声が響いた。ドアから入ってきたのは 中島隼斗 ――いじめの主犯格でしかもリーダーの奴だった。
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