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第5話 高校時代〜ガチいじめ始まる〜
「おい、何やってるんだ!」
放課後の教室に中島の怒声が響く。
よかった助かった――とはならない。なぜならこの時の状況は…
倒れた椅子。床に転がった女子生徒は胸元がはだけてブラジャーが見えている。そこへ前屈みで手を伸ばした俺のスラックスはチャックが全開だった。
詰んだ。
しかも見られた相手がよりによって主犯格の中島とは。
「ち、違うんだ…」
「おいてめぇ、伊藤が小山田 の彼女なのわかってんのか?!女みたいな顔してサカってんじゃねーぞ!!」
激怒して口から唾を飛ばしながら罵ってくる。同時に頬を張られて俺は吹っ飛ぶ。中島はバスケ部主将で身長は俺より20センチ近く高い上、鍛えられた腕ではひとたまりもなかった。
こいつの言う小山田は同じバスケ部の副部長で、2人は仲がいいため義憤に駆られているのだ。そうだった…伊藤の彼氏は小山田だった…失念していた自分を呪う。
「違う、俺は何もしてない…あっちが先に…」
「おいお前伊藤が誘ったっつってんのか、ああ?!ざけんなよ!」
胸ぐらを掴まれる。張り倒されたせいで鼻の付け根がツンとして鼻血が流れてくるのを感じた。
俺が掴み掛かられてる間に伊藤は胸元を掻き合わせ「大門に告白されて押し倒されそうになった」とぬかしやがった。ここで伊藤が本当のことを言うわけがないとわかってはいたが俺にとってあまりにも不利な状況だった。
こうなってはもう男の俺が何を言っても聞いてはもらえない。
突き飛ばされ、床に転がったまま中島を見上げる。鼻血が口の中まで垂れてきて鉄の味がする。
不思議なことに、怒りに燃えて俺を見下ろす中島の目は今まで俺を性的な意味で襲おうとした男たちと同じ色を帯びているように見えた。
そう思った瞬間、腹に衝撃を受けた。中島が蹴りを入れてきたのだ。俺はうずくまって痛みに耐える。
「このままで済むと思うなよ」
そう言って中島は伊藤を連れて教室を出て行った。
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