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第10話 高校時代〜生徒会室〜
翌日の朝掲示板をチェックすると中島から返事が来ていた。
“放課後生徒会室”
「はぁ~?なんで生徒会室だよ??」
中島は生徒会役員でもないというのに。
あいつの考えることはさっぱりわからない。
学校に行くのが億劫で少し遅刻して1時間目が始まってから登校した。
授業が始まるまでの間ですら、昨日の奴らと顔を合わせるなんて嫌だった。
そして放課後、生徒会室前に俺は立っていた。ここに中島がいるのだろうか。
ともかくノックしてドアを開ける。
中にいたのは同じクラスで生徒会副会長の仁乃綾太郎 と別クラスの書記をやってる阿久津 って奴だけだった。
「中島は?」
「中島は来ない。俺が君に用があってね」
「仁乃が?一体何だよ」
あまり接点が無く喋ったことがない相手なので警戒する。
仁乃はいつも口角が上がって愛想の良い美形だが、なんとなく嫌な感じがする。
伊藤の噂の件で風紀を乱したとかで生徒会から怒られるんだろうか?
もしそうならかえって誤解を解くチャンスになるかもしれない。
「仕事が終わるまで待っててくれ。そこにそのまま立ってて」
「はあ?何で立ってないといけないんだよ」
「中島から返してもらいたいものがあると聞いている」
「なっ!」
なんでこいつがそれを知ってるんだ?
ってことはかまさか昨日のことまで知ってるんじゃないだろうな。
あいつ、べらべらと喋りやがって!
怒りが込み上げてくる。
「いいから黙って立ってろ。これは命令だ」
命令だ?…何なんだよこいつら。
中島は昨日尻尾巻いて逃げて(きっとあの後どこかで抜いたんだろう)今日は代わりに生徒会副会長がご登場ときた。
俺こいつらに恨み買うようなことなんかしたことあったっけ?
仁乃も小山田の友達とか?
俺は仕方なく黙って仁乃の横に立っていた。
とにかくUSBメモリを取り返さないといけない。
目の前の机で副会長はノートパソコンに何か打ち込んでいる。
やることがないので仁乃の横顔を眺める。すっきりした鼻筋、少し癖のあるアッシュブラウンの髪の毛、優しげな目元に眼鏡を掛けている。肩幅が広く、今は座っているが立つと背も高い。
さらにこいつは確か良いとこのボンボンなはずだ。
人の良さそうな顔して「命令だ」とはね…
はぁ、やれやれ。
俺は阿久津に視線を移す。コの字型に並べられた机の向かい側で書記の阿久津は書類に何やら書き込んだり整理したりしているようだった。
コイツのことはよく知らないが、いつも無表情な印象。
短い黒髪、背はあまり高くなくて170センチそこそこくらいに見えるが鍛えてるのかかなりがっしりした身体付きだ。
目つきが鋭くて怖い。
30分経った。
その間阿久津が仁乃に書類の件で1つ2つ質問したくらいであとは皆無言だった。
何待ちなんだよこれ…
つーか席余ってんだから座らせろよ。
俺は足踏みしたり貧乏ゆすりしながら文句を言う。
「なあ、足痛いからそこ座っていいだろ」
「黙れ」
仁乃は俺に目もくれず答えた。
おーい、皆んな。優しい副会長様の本性はこんなですよー。
大人しく待って、とうとう1時間経った。
足の痛さもそうだが、それよりもっとまずい生理現象に俺は気がついた。
「あのさ…トイレ行きたいんだけど」
「うるさい」
はぁ。そうきたか。さて、どうする。
めんどくせえな…何が正解だよ?謝りゃいいのか?
「なあって。我慢できないんだよ」
「……」
仁乃は返事すらしなくなってしまった。
「おい、阿久津。お前からなんとか言ってくれよ」
「喋るなと言われてるだろう」
くっそ。ほんとに何なんだよコイツら。
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