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第23話 男に狙われる理由

それから俺は毎日、あの部屋でレッスンを受けた。 例のフェロモン?みたいなのもコントロールがだいぶできるようになった。 なので最初の時みたいになることはもうない。 「自分のフェロモンに当てられて自分から性欲に溺れちゃぁ意味がないからね」 賀茂さんはそう言って笑った。 仰る通りです、はい。 そのフェロモンについて聞いてみたんだけど、 はっきりはわからないものの、斎王の血を引く人間は下賀茂神社の祭神である玉依媛命(たまよりひめのみこと)(八咫烏になった神の娘)の影響を受けやすいとかなんとか。 玉依媛命の魂を引き付けやすく、たまに乗り移られたりするんだってさ。さすが巫女さんだよな。 で、俺の場合は特別に玉依媛命との魂の結びつきが強いそうだ。 「なんで俺だけ?」 と俺が訊くと 「これは私の想像だが、君は一度轢かれて心停止になっただろう。それで蘇生する際に、玉依媛命が無理やり君の魂をあの世から引っ張り戻したんだと思う。一応彼女なりに君たちを守ってるんだろうな。君は夢で女性に手を引っ張られたと言っていたよね」 「ああ!あのときの。そうか…それで…」 「そう。で、私は一応陰陽師の末裔で、多少んだけどね。今まで見た取り憑かれてる人間の場合、本来の人間の魂と取り憑いてる魂は完全に別々に見えるんだ。だけど、君の場合は…混ざり合ってお互いの魂の輪郭が曖昧に見えるんだよね」 「え?!魂見えるんですか?!」 「いや、魂そのものというか、当世風に言うとオーラみたいなものかな」 これで納得する俺も俺だけど、科学では説明のつかないことってあるよね。 そんなわけで俺は玉依媛命のパワーを今までの斎王子孫たちより強めに出せるらしい。 で、玉依媛命は別名を勢夜陀多良比売(せやだたらひめ)とも言われてるんだけど、ある男の神様がその美貌に惚れて、勢夜陀多良比売がトイレ中に丹塗の矢に化けていきなりあそこを刺しちゃった…なんていう神話もある。 とにかくそれくらいの美女だったってこと。ちなみにこれは古事記の話だ。 「だから生まれつきその姫の影響を受けてる亜巳くんは昔から男に追いかけ回されてたってわけだ」 「う、嬉しくない…」 「ははは!そうだよね」 「酷くないですか?トイレしてるときにって…ヤバいやつですねこの神様」 「ギリシャ神話もそうだけど日本神話も結構とんでもエピソードが多いよ」 「こわ…」 「そういえば君が歳をとらないように見えるのも玉依媛命と魂が同化しかけてるからかなぁ」 「えっ!俺まさか不死身なの!?」 「いやいや、さすがにそれは無いけど、多少歳を取りにくい身体にはなってるようだね」 「へぇー。すげー…」 ちなみにタマヨリヒメって同名の神様が居るけどそれは別人(そっちの玉依姫は神武天皇の母と言われてる)ね。 さて、こうして謎のパワー?フェロモン?についての理解が深まった。 更に俺は、女王様用コスチュームを身に付けるのにも慣れた。 最初は鏡を見るのも恥ずかしかったが、今はやっぱり女王様らしいのはボンデージかな、なんて思ったりする。 俺の白い肌に黒い革のベルトやスタッズの付いたビスチェはアンバランスで、我ながらエロいと思う。 こういう露出の多い服(?)を着るようになって、お尻や太もものラインを気にするようになった俺は柄にもなく筋トレとヨガを始めた。 だってどうせなら少しでも格好よく着こなしたいじゃん? お腹が出るコスチュームも多いし、ぷよぷよだと恥ずかしいもんな。 あと苦労してるのがハイヒールの類だ。 ブーツはまだ安定感があって歩きやすいが、ピンヒールの華奢なデザインのパンプスはすごく歩きにくい。 こんなの街を履いて歩いてるお姉さんすごすぎだよ。 俺は街でヒール履いてるお姉さんがいたら尊敬するようになった。

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