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第40話 中島の告白
俺は気付いたらベッドで寝かされ布団もかけられていた。
あくびが出る。
昨日あれからどうしたっけ?
そこまで考えて目を開けて飛び起きた。
「あ…俺なんで寝て…っ」
信じられない。襲撃した先で気持ち良くなって寝落ちするなんて!
俺は血の気が引くのを感じた。
坂本は――!?
ベッドから降りてさっきまで坂本が座っていた椅子を覗き込む。
誰もいない。
俺は知らぬ間にいかがわしいランジェリーは脱がされて、身体も清められた上にサイズがデカすぎるシャツを着せられていた。
おそらく中島の服だろう。
焦ってリビングに向かう。すると朝のニュースを見ながら男たちが3人で食卓を囲んでいた。
え…?
「あ、起きたか」
「おはようございます」
「おはよう亜巳様」
何?なんでお前ら仲良く朝ご飯食べてんの?
「あ…なんで…」
「大門、朝ごはんはパン?ご飯?それともシリアルがいい?」
意味がわからない。坂本は昨日あんなに中島に敵意むき出しだったのになんで日和ってるんだ?
賀茂さんはこのこと知ってるのか?昨日帰らなくて連絡もしてなくて…
「亜巳様~おーい。落ち着いて、まず座って」
坂本に背中を押されてダイニングの椅子に座らせられる。
「賀茂さんなら大丈夫。こっち泊まるってちゃんと連絡してあるから。で、朝飯なんにします?中島くんなんでも作ってくれるよ」
「…ごはんがいい…」
中島はそれを聞いて白米をよそうと味噌汁、卵焼き、漬物などと一緒に並べてくれた。
後から焼き魚も焼き立てで出てきた。
美味かった。昨日も夕食を食べそこねていたから腹ぺこだったのだ。
朝食を食べ終えると、井上が出勤すると言って出ていった。
坂本は今日は午後から練習があるが午前中はフリー。
中島は今日が丸一日オフだとわかっていたから昨日を襲撃の日に選んでいた。
俺たちはリビングのソファに席を移し中島が淹れてくれたコーヒーを飲む。
「いやいや、ちょっと待ってやっぱおかしいだろ」
「え?」
「なんでこんなくつろいでるんだよ!俺たちは中島を襲いにきたんだぞ?なんでお前は朝飯出してコーヒーまで淹れてんだよ!」
それを見た坂本が呆れたように言う。
「全部食べた後でコーヒーまで飲んじゃってるのに今更何言ってんですか」
ど正論すぎて俺は恥ずかしくなる。
「だって、出てくるんだもん仕方ないだろ」
「いいんだよ。美味しかった?」
「うん。お前料理できるんだな」
「それなりにね」
なんか、高校の時と人が違ったみたいに優しくなってて変な感じがする。こいつは本当にあの中島なのか?
「なあ、お前どうしちゃったんだ?こんな奴じゃなかったよな。俺のこといじめてたくらいなのになんでこんないきなり優しくするんだ?」
「いきなりって…俺にとっては8年経ってるからいきなりじゃあないんだけど…」
それもそうか。でも俺にとってはいきなりなんだよ。
「俺、お前が死んで気づいたんだ」
「なににだよ?」
「大門のこと好きだったって」
は、はぁあああああ!?!?
俺は顔が熱くなる。
「何いってんのお前!」
「俺もそう思うよ。何言ってるんだろうな。でもあのとき俺自分でも本気でわかってなかったんだ」
俺は賀茂さんが言ってたことを思い出した。
「中島くんって亜巳くんのこと好きだったんじゃないの?」って。
あれが当たってたってこと?
「最初に大門が伊藤襲ったところに出くわして」
「襲ってねえ、向こうが襲ってきたんだよ!」
「ああ、そうなのか。じゃあ伊藤が大門を襲ったところに出くわして、俺は異様に腹が立って…それは伊藤が小山田の彼女だからだって思ってた」
「それはそれは友達思いなことですねー」
「でも、たぶん今思えば伊藤の方に嫉妬してたんだ」
「はあ?」
「お前のこと殴って、鼻血が出てて…それ見てめちゃくちゃ興奮したんだ」
「え、キモ!お前そんなこと考えてたの!?」
「帰ったらお前の血が制服のシャツについてて」
え、怖い怖いなに?
「それ舐めたら勃ったからお前の顔思い浮かべてオナった」
やめてええええええええええええ
16歳の俺を汚さないでええええええええええええええ
「え…その解説いります?墓場まで持ってってよそんなの…」
俺は頭を抱えた。恥ずかしすぎて死にたい。
「いや、全部隠さず言うことにしたから。俺は大門の下僕なので」
「いらない!いらないよそのサービス精神!」
「それでその後は知っての通りのいじめ行為ね。本当にごめん。謝っても許されることじゃないけど」
「もういいよ、それは」
「よくないよ。寄ってたかってバカなことして。特に仁乃のことは本当に悪かった。あいつに話したのは本当に間違いだった」
「あー!仁乃な!あいつなんなの?怖すぎだよ。お前ら仲良かったの?」
「いや、あいつはなんていうか…腐れ縁というか。あいつは真性のドSで、極度の男嫌いだからお前のこと話しても興味持たないと思ってたんだ。ただ俺がいじめてる相手を見たいって言うからお前を生徒会室に行かせちゃって…後から仁乃に話聞いてあいつのこと殺そうかと思ったよ」
うん、あいつはね、殺していいやつだ。
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