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第42話 賀茂さんと中島
坂本は練習に行ったので俺が中島だけ連れて賀茂邸に帰った。
「やあ、はじめまして。君が中島くんか~、賀茂正臣です。よろしく」
握手する賀茂さんは珍しくテンションが高めだ。
もしかしてファンだったとか?
「はじめまして中島隼斗です。よろしくお願いします」
「君、優秀だねぇ。うちのことまでたどり着いてたでしょう」
「はい。あと少しだったのに先に捕まって悔しいです」
「ははは!いいね。さあこっちに座って。お茶を淹れよう」
どうやら中島の調査が自分の店にまで迫りかけていたので優秀な人材と見てテンションが上っているようだ。
「甘いのでも大丈夫かな?」
「はい。甘党なので大丈夫です」
俺はあんまり甘いの好きじゃないんだけど…
賀茂さんが入れてくれたのはロイヤルミルクティーだった。
俺の分はちゃんと砂糖抜きで甘さ控えめにしてくれていた。
さすが。だから賀茂さんのこと好きなんだよね!
甘党の賀茂さんと中島の分は生クリームをたっぷり載せてあった。
俺はこれ絶対無理~。
「美味しいです」
「だろ!?賀茂さんのお茶いっつも美味しいんだよ」
何故か俺が自慢げに答えてしまう。
「中島くん、亜巳くんに会えてよかったね。ずっと探してたでしょう」
「はい。もうだめかと思うこともありましたが」
「すまないね。隠していて」
「いえ、生きてただけで充分です」
「一途だねえ」
なんか知らないがすごく穏やかに会話している2人だった。
「賀茂さん、中島と坂本に聞いたら次は仁乃じゃなくて小山田にしろって言うんですけどどう思います?」
「ああ、いいんじゃない。仁乃君やるのはもう少し亜巳くんが成長してからのほうが良いかも知れない」
そんな手強いのかよ…
「それに亜巳くんもそろそろ小山田くんに会いたいでしょ」
「え、小山田に?なんで?」
「大門、小山田に会いたいの?」
「いや、別に会いたいとか思ったことないけど…」
「ふーん、なんかムカつくな。大門は俺にも会いたかった?」
「はあ?何?」
俺がイラッとしていたら賀茂さんが面白そうに言う。
「亜巳くんね、中島くんに会う前機嫌よくて鼻歌歌ってたんだよ」
「な!賀茂さんなんでそういう余計なこと言うかなあ!」
「え…大門マジで…?俺嬉しい…」
馬鹿じゃないの?!
中島とか小山田とか、別に会いたいとか思ったことねーし。
なんで同級生にそんなこと思うんだよ。
中島のことは、びっくりさせてやろうと思ってそれが楽しみだっただけだ。
でもせっかく嬉しそうだから俺は黙っていた。
基本下僕には優しいからな。
「小山田は今プロバスケットボール選手なんですよね。どうやってシメましょう」
「あんまり身体に傷つけられないよねえ」
「鍛えてるから大丈夫じゃね?」
俺たちは小山田攻略について話し合った。
けど、結局あいつはかなり感が鋭いので下手な小細工は無駄だろうということになった。
普通に中島から話があると誘い、中島の家に呼ぶことにした。
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