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第43話 小山田啓介【職業:プロバスケットボール選手、???】

決行当日は俳優の中島と、バスケ選手の小山田の予定が夜から翌日まで空いてる日という事で、それがなかなか巡ってこなかった。 ようやく年の暮れになってその日が来た。 「ちょうど忘年会時期だし、皆んなで集まれていいですよね」 と、坂本は忘年会気分だった。 「お前はなんでそんなに余裕かましてるんだ?今夜やるんだぞ?」 「えー、だって小山田さんはあの経歴書の中でも一番まともじゃないすか。もう、皆んなで鍋でもしません?縛ったりする必要なさそうっすよね」 うーん、たしかに。縛る必要あるのか? 普通に頼んだら、俺たちのやってる事に協力してくれるんじゃないかなぁ。 でも賀茂さんが前に言ってたように、小山田が俺のいじめを止められる唯一の人間だったんだよな。なのにそれをしなかった理由は聞きたい。 これをしらばっくれるようならやっぱり拘束するしかないか。 でも小山田、でかいんだよなぁ。 身長は坂本が192㎝、小山田も190㎝ある。 いつも坂本が相手を軽く拘束してくれるが、小山田が本気で抵抗したら坂本1人じゃ難航するだろう。 165㎝しかなくてヒョロい俺は役に立たないとして中島も182㎝で筋肉まあまあついてるしなんとかなるか。 ほんとみんなデカくて羨ましいよな。 俺と坂本は昼間から中島の家で待機させてもらっていた。中島は仕事で出掛けており、夕方になって帰ってきた。 買い物袋を持っていてたくさん材料を買ってきている。 「大門、今夜は鍋でいい?」 「お前は坂本か?」 「え?何??」 「坂本も今日鍋にしようって昼間話してたんだよ」 「あれ…まずかった?」 「緊張感無すぎじゃない!?」 鍋皆で囲んだ後SMプレイとか無理じゃね? 「でもせっかくみんな揃うから…」 いやいや同窓会じゃないんだから。 かといって、もう材料買ってきちゃってるし作ってもらうのに文句も言えないので鍋に決定した。 俺は料理は出来ないが、一応手伝うことにした。 坂本も料理はできるようで、中島と手分けして野菜を切ったりうまくやってる。 俺は役に立たない上、言われたことも満足にできなかったので、座っているように言われた。 インターホンが鳴って小山田が来たのは19時過ぎだった。 俺と坂本はリビングで待っていて、中島が玄関に迎えに出た。 話し声がして、リビングのドアが開いた。 俺と坂本は立ち上がる。 「大門…?」 小山田は驚いていた。 だけど、怖がってはいなかった。 「久しぶり」 「おい、本物の大門なのか?それとも何かのジョークのつもりか?」 小山田が中島に訊いている。 「本物だ。俺が見つけた、と言いたいところだが、向こうから接触されたんだ」 「本物なのか…しかしどうやって?見た目も昔のままじゃないか」 中島は、話せば長いからと鍋を始めるよう促した。 中島、小山田、坂本、俺という謎のメンバーで鍋をつつくことになった。 井上は残業で全然最近は会えていない。 鍋は海鮮の出汁が効いてて美味しかった。 俺は食べながらぽつりぽつりとこれまでの経緯を小山田に語って聞かせた。 小山田はたまに頷きながら、静かに聞き入っていた。 「まーそんなこんなで俺は16歳のままで、賀茂さんたちが助けてくれて、俺のこといじめてた奴らをボコボコにしてってるんだ」 小山田が端正な顔を歪めることなく真顔で聞いてくる。 「じゃあ俺のこともボコボコにしにきたのか」 「えっと…まぁ、そうかな」 「それでデカいの2人連れてるのか」 「だって俺の体格でお前ボコすの無理でしょ」 「ふん」 感じ悪~っ。 「大体さ!あのとき小山田がおれのこといじめるなって中島に言ってくれたら中島やめてくれたんじゃないの?」 なぁ中島?と俺が聞いたらうんうんと頷いてくれる。 「なんで中島のこと止めてくれなかったの?伊藤さんのことは、もう別れたし怒ってないって言ってたじゃん」 俺は背筋を伸ばして小山田を正面から睨む。 でも、暗示のフェロモンは使ってない。 だって力使って答えさせても意味ない気がしたから。 俺は、素の状態の小山田に聞きたいんだ。

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