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第44話 小山田の弁明
「俺が中島を止めなかったのは」
そこまで言って小山田はちらっと中島と坂本を見た。
こいつらがいると言いにくいことか?
「こいつらは俺の下僕だから気にしなくていい。本音を言えよ」
「そうだな。俺ももう吹っ切れてるから言う」
なんでなんだ?小山田。
「俺が中島を止めなかったのは、あのとき俺が大門に惚れてたからだ」
えええっ?お前も?
あ、あれか。セヤダタラヒメの神通力的なやつか!
おいおいまさかあの小山田までフェロモンにやられてたのかよ。
っていうかそれが原因なら俺、全部自業自得ってこと?
すると中島が地響きみたいな低い声で言った。
「おい小山田、どういうことだよ?お前女と付き合ってたろうが」
「それはお前も同じだろ。しかも大門をいじめてたのはお前だ。俺じゃない」
「そういうこと言ってるんじゃないんだよ。好きなら守ってやればよかったろうが」
「俺はゲイだってそのとき気づいてなかったし、大門のことを好きなのも認めたくなかった。特に、お前に知られたくなかった。大門をいじめるなって俺がお前に言ったら、大門に惚れてることを自分が認めないといけないからな」
そこで俺は口を挟む。
「なあ、ちょっと聞いてくれ。さっき説明するとき長くなるから端折ったんだけどさ」
「なんだ?」
「お前たちはゲイじゃないし、本当は俺のこと好きなわけじゃないんだ」
「はぁ?」
そこでちょっと面倒だったが、坂本にも補足してもらいつつ、 八咫烏 のことや 勢夜陀多良比売 の力の話をした。
「だから、お前たちが俺に惚れてるのはセヤダタラヒメのせいなんだ。だから、気にすんな!」
中島と小山田が俺をじーっと見ている。
そして小山田が言う。
「大門。もうそんなのはどうでもいいんだよ。とにかく俺は大門が死んだ後今までの間もゲイとして普通に生きてたからな」
そうだったんだ。知らなかった。経歴書にも特に書いてなかったような?
俺は特殊な性癖の人たちを見過ぎて感覚が麻痺してるのでゲイだというくらいで驚きはしなかった。
でも、高校の時俺のこと好きだったんだ…
俺はあの日廊下で小山田と話した時のことを思い出していた。
「あのとき…廊下で俺が伊藤のこと説明したとき覚えてる?小山田に唇撫でられて俺、なぜかキスされるって思ったんだ」
中島が小山田を睨む。
「ああ、あのときお前唇から血が出てて…何故か無性にそれを舐めたくなったんだよ」
それを聞いて俺は赤面した。
中島にしろ小山田にしろ俺の血をなんだと思ってんだ!
いや、待てよ。血になんか混じってるのかな?セヤダタラヒメのエキス的なのが。こわ…
その後は結局普通に鍋を食べ終えて、中島が入れてくれたコーヒーを飲みながらテレビを見ていた。
あれ?と気づいた時には坂本がテーブルに突っ伏して寝ていた。
緊張感の無いやつだな…と思ったけど小山田も寝落ち寸前だ。
なんか俺も…眠い…な…
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