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第53話 仁乃綾太郎【職業:警察キャリア官僚、下僕(予定)】

「えっと…さすがにそれは…ヤバくない?」 「大丈夫大丈夫。仁乃の異常さを考えたらそのくらいが妥当!」 「えげつねぇ~~…」 多少物議を醸す計画ではあったが、このまま執り行われることとなった。 仁乃と現在も交流のある中島が、まず仁乃を食事に誘う。その席でもしタイミングが有れば仁乃の飲み物に睡眠薬を入れる。無理そうなら、給仕に扮した純が睡眠薬を入れた飲み物を運ぶことにする。 日程は仁乃、中島のスケジュールが合ってしかも、仁乃の父親も空いている日ということで調整がなかなか難しかった。 それでもなんとか全員のスケジュールを合わせることに成功した。 仁乃の父・司には決行当日のSalomeの予約を入れさせた。 常連客だけが参加できる特別な催しだと伝えたら二つ返事で参加を希望してきた。 本当に、ある意味ではあるが…。 この父親に直接恨みはないが、仁乃を野放しにしてあのように育てた責任をとってもらおう。 中島から誘った食事だが、仁乃の方で店を指定してきた。 父親の行きつけの料亭だそうで、幸いこの店も賀茂さんの顔が利いた。純と俺と坂本は作務衣姿で店内に潜伏することになった。 「純と亜巳くんは女将みたいな着物でも良かったかな」 と賀茂さんがふざけたことを言っていたが、俺は緊張していて笑えなかった。 仁乃の家は親子揃ってキャリア官僚だ。父親は外務省の事務次官で、息子は警察庁に入庁したばかり。あの、性格破綻者が警察官僚だというから経歴書を見て俺はすごく驚いた。この国はどうかしている。 まあ、これから俺たちがやろうとしていることも十分イカれているが。 ある意味、日本の腐った警察を叩き直す善行だ…と開き直って大義名分を掲げてみる。 さて、部屋には中島と仁乃がやってきてさっそく酒を飲み始めた。 なるべく酔わせて警戒心を解いてから、薬を混入するよう中島に指示してあった。 室内の音声は小型のマイクを設置して、別室で賀茂さん含め皆が聞いている。 何かあったら賀茂さんからイヤモニで指示を受けることになっていた。 高校時代の同級生相手だから油断しているだろうことはわかるが、それでも相手は警察官僚だ。 うまく連れ去ることができるかかなり不安だった。 しかし、酒を飲んだ仁乃はただ饒舌になって機嫌が良さそうで、何も警戒する様子も見せなかった。 そして、純の出番を待たずに手洗いに席を立った仁乃の盃に薬を盛った中島がそれを上手く飲ませてほどなくして仁乃は眠りについた。 中島の合図で、俺と純と坂本は即座に部屋になだれ込み、仁乃の身体を担ぎ上げて裏口から出ると待たせてあったバンに仁乃ごと全員乗り込んだ。 上手く仁乃を回収できた。

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