12 / 13

最終話

20xx年7月7日 遊馬の考えてくれたプランで1日過ごし、最後にとあるプライベートビーチへやってきた。 「今日は、ありがとうな。」 辰巳は、遊馬の出会った時よりも幾分落ち着いたブラウンの髪を優しく撫でる。 この日が来たらと、辰巳はずっと考えて今日まで過ごしてきた。 「お前が、好きだ。」 想いを告げ、辰巳は少し冷たい遊馬の身体を抱き締める。 「ぉ、お…俺もっ」 そこまで言って、遊馬はその先を躊躇った。 先に起こることを察して、辰巳は抱き締める腕に力を込める。 「す、好き…だよ…。」 涙声で、答えた遊馬の唇に親指でそっと触れる。 そのまま自分の唇を合わせると、遊馬の身体がポタポタと小さな音を立て始めた。 「…!おい!!!」 辰巳の脳裏にあの時の記憶が蘇る。 こんなにも、一瞬にして生きた証を残さずにひとりの人間が消えてしまうのかと悲観した。 「ごめんね、今までたくさんありがとう。」 少しずつ抱き締めた身体の感触が消えてゆく。 辰巳の足元には、月の光を浴びてキラキラと光る水溜まりが出来ていた。

ともだちにシェアしよう!