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第6話 発症

また、勉強だけする日々に戻った。 もう誰とも喋る気にもなれなかったから、髪の毛を切って整え、眼鏡もやめた。 隠れているから見たいのであって、隠されていなければそれほど気にならないものだ。 僕が普段から顔を晒すようになったら、男たちも噂するのをやめたし腕を掴まれて物陰に連れて行かれることもなくなった。 頭が悪いわけじゃなかったから勉強すれば成績が上がるし、どうせ社会に出て役に立てられなくても、少なくとも勉強で他の男達に勝てるならそれはそれで満足だった。 そして大体の同級生が大学選びの際に経済学部などに受験を検討する中、僕は誰も選ばなそうな医学部を志望することにした。 精神科医にでもなれば、自分のこの不安定な感情を落ち着ける術がわかるかもしれない。 そんな単純な動機だった。 父親は「医者なんて」と嫌な顔をしたが、それが逆に父の気を惹けたようで嬉しくて無理を通して受験した。 無事に合格し、入学後は夢中で勉強した。 精神科医を目指していたとしても、とりあえずは全般に学び、各科の研修を受けなければいけない。 体力的にもキツかったが、没頭することがあればそれなりに精神は安定を保つことができた。 そう思っていたのに、とうとう僕の忌まわしい病気は発症した。 学部2年次のときだった。 僕は勉強に研修にと忙しく、充実した日々を送っていた。 理系の人間、しかも医学部には勉強好きで、他のことに興味がないという人間も多かった。 だから、高校の上級生たちのような優秀ではあるが品のない人間とは違って、このような容姿の僕であっても気にせず友人付き合いをしてもらえるようになったのだ。 それはとても居心地がよく、僕はすっかり病気のことなど忘れかけていた。 そもそも、痣があるだけで病気持ちじゃなかったのかもしれないとすら思い始めていた。 そして、友人たちも僕も誕生日を迎えて20歳になった。 数名で初めてお酒を飲みに行った。 あまり強い酒は飲めなかったけど、アルコールでハイになって気分が良かった。 楽しく飲んで、ちょっと飲みすぎてしまった。 僕がフラフラしていたので、店から家が近くて一番仲の良かった友人である上野のマンションに泊めてもらうことになった。 肩を貸してもらってなんとか部屋に到着した。 ソファに寝かせられて、服を脱ぐように言われたけど、怠くて身体が動かせない。 「脱がせて…」 別に他意なく言っただけだ。 しかし、ソファにしどけなく寝そべる僕を見下ろす上野の目がそれを聞いて欲望の色に染まった。 あ…まずい… そう思った時には遅かった。 その目を見て、僕自身も体の芯が熱くなって火照ってきてしまったのだ。 頭ではダメだと思うのに、その熱をどうにかしたくてたまらなくなる。 「上野…」 僕は上野の袖を引いた。それが合図となり、上野は僕にのしかかってきた。 「誘ってるのか?」 「うん…好きにしていいから…」 上野は僕の服を剥いで床に投げ捨てた。

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