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瓢箪から駒3

「何かさ、鐘崎君のお父さんが白夜のことをすごく褒めてたらしくてさ」 「はぁ? 俺を……? 何でまた――」 「鐘崎君のお父さんって、白夜たちが例の取引現場に連れて行かれた時には、もう既にあの倉庫に潜んでいたっていうじゃない? それで、しばらくはすぐに助けないで、紫月君と白夜がどう行動するかを見守ってたようなんだけど――」  そうなのだ。鐘崎の父親は、窮地に陥った子供たちが自らの手でどこまで対応できるかを見定める為に、敢えて手出ししないで静観していたというのだ。無論、本当に危なくなったらすぐにも助け船を出すつもりでいたらしいのだが、それも彼なりの親心といったところだったようだ。 「それでさ、あの時の白夜の行動が的確で大したもんだって思ったらしくてさ。知恵と行動力が素晴らしいっていうような話をしてたようなんだよね」  そんな会話の中で氷川が美友の胸を揉んだ話も出てきたのだろう。それを偶然にも冰が聞いてしまったということらしい。  まあ、不可抗力とはいえ、氷川はガックリと肩を落として落胆させられてしまった。 「……ったく、師匠もいらぬことを言ってくれたもんだよなぁ……」  ついつい愚痴もこぼれる。  あまりにも落ち込んだ様子の氷川が可笑しく思えたのか、あるいは気の毒に思えたわけか――冰はクスッと笑うと、悪戯そうに隣の氷川の顔を覗き込んだ。 「ンな、落ち込むなって! 俺、怒ってるとか、そういうわけじゃ全然ねえし」  朗らかに言う冰を、氷川は上目遣いでチラリと見やった。 「――マジ?」 「ああ、マジ! 美友さんの胸を揉んだってのは作戦だったわけだし、やっぱ白夜って頼りがいあるってか、すげえなって素直に思っただけだし!」 「マジかよ……」 「ん! たださ……」 「ただ――何……?」 「んー……別に比べても仕方ねえことだってのは分かってっけど……。ちょっと心配つか、ホントに……俺でいいのかって思っただけ」  氷川は冰と付き合う前はそれなりに女性とも関係があったわけだし、特にはゲイというわけでもなかった。冰が特別なのであって、男性にしか興味がないというわけではないのだ。  冰にしてみればそのあたりが気になるところなのだろう。もしも氷川がやっぱり女性の方がいいと言い出したらどうしようなどという思いがチラりと脳裏を過ぎったようだった。  冰の何ともいえない複雑な表情からそんな思いを見て取った氷川は、あまりの可愛らしい一面に、フッと笑みがこぼれるのをとめられなかった。 「もしかして――妬いたってか?」  今度は氷川が少々悪戯そうに口角を上げて冰を覗き込む。

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