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瓢箪から駒4

「はぁ!? 誰が……! 妬いて……なんか……ねえって……」  瞬時に頬を真っ赤にしながらも、語尾に行くほど弱々しい口調になる冰を、氷川はむんずと抱き締めた。 「たまんね! 可愛すぎ! お前」 「ちょ……っ、白夜……!」 「いんだよ。お前にゃ、でけえ乳よかもっと萌える乳首があるしさ」 「はぁ……!? ち、ち……ちく……」  恥ずかしい台詞を恥ずかしげもなく言う氷川に、冰は口をパクパクさせながら茹で蛸状態だ。 「――な、吸ってい?」 「えッ!?」 「お前のカワイイ乳首――」  言うや否や、スッとシャツを捲し上げ、親指の腹で突起を弄られて、冰は「ひッ……!」と、声にならない叫び声を上げてしまった。 「ちょ……ッ、白……! 白夜……!」 「ん――? もうそんなかよ?」 「あ……! ちょ……ッ、待っ……ヤ……っ」 「ちょっと触っただけで、もうこんなプックリ」  氷川はまたも恥ずかしい台詞をわざと吐きながら、慌てふためく冰を一瞬でソファへと組み敷いてしまった。そして捲し上げたシャツの中へと頭ごと突っ込んで、今度は指に替えて舌先で突起を絡め取る。 「……ッ! ……は! 白……ッ」 「ん――、マジ可愛い乳首だぜ! 感度は抜群! そんでもって、めちゃくちゃやーらしいチ・ク・ビ! な、冰たん?」 「……なっ……! ンだよ、それ……! 冰たんとか……そんな呼び方、恥ずかしいからよしてくれって……あッ……!」 「んー、よさねえ。妙にお前に合ってて可愛らしいから気に入った、この呼び方!」  クスクスと人の悪い笑みを浮かべながら、氷川は楽しげだ。 「……ッあー……、もう……! よせって……のに……!」  快楽と羞恥と、両方の波に押し流されそうになりながら頬を染める恋人を組み敷きながら、氷川は笑った。 「んじゃ、よしてやってもいいぜ? そん代わり――ベッド行くか!」  そんな台詞と同時に下肢に特有の硬い感覚を押し付けられて、冰の真っ赤な頬はますます熟れて落ちそうだ。  そのまま、氷川の逞しい腕に姫抱きされてベッドへと連れ込まれた冰は、一晩中といっていいくらいの長い時間をかけて、野生の獣のような恋人に昇天寸前まで愛されまくったのだった。  その翌日のこと――一之宮家の道場で稽古を終えた氷川は、縁側に腰を下ろしながらポツリと呟いた。 「んー、可愛いと思うんだけどな、冰たん――ってよ」  だが、冰は本気で嫌がっているようである。今まで通り呼び捨てでいいと、あの後も散々に念押しされたのだ。氷川にしてみれば、そんな冰の困った顔を見るのもある意味オツだと思うわけだが、あまりからかい過ぎても気の毒かも知れない。  可愛らしいあだ名呼びは諦めるとして、氷川にとっては収穫がなかったわけじゃない。思い掛けず恋人の嫉妬心を垣間見ることができて、しかもそれをきっかけに熱く濃厚で大満足の一夜を過ごすことができたわけだ。 「冰たんはダメでも、瓢箪から駒――なーんつってな」  自分でも上手いことを言ったと思うわけか、上機嫌でしばらくニヤケ顔がとまらない氷川であった。 『瓢箪から駒』- FIN -

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