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第7話***
翌日も僕のヒートは続いた。母の用意してくれた食事は、半分ものどを通らない。それでも相変わらずからだは熱くて、怠くて、湊先生を求めている。どのアルファ性でもいいのではなくて、湊先生じゃないと、嫌だった。
スマートフォンを片手にとる。また電話したらだめだろうか。今は仕事中だから、きっと出てはくれないだろう。そう思うと、悲しかった。湊先生のいちばんになりたいのに、なれない。
湊先生の声を、仕草を、手付きを思い出すと、下腹部に熱が集まっていく。
「ん……っ」
先生、名前を呼んで。頭を撫でて。
スマートフォンの録音機能で、昨日の通話を再生する。
『はい、湊です』
録音なのに、仕事用の人を安心させる柔らかな声に、耳が熱くなる。
『遥くん、今、ヒート?』
そう。だから先生、助けて。ぎゅってしてくれるだけでいいから。
録音された湊先生の一言一言に返事をしながら、からだは徐々に熱くなっていく。下着の中がじっとりとしはじめていた。
『僕はアルファだから、』
僕はアルファの先生と番になりたい。先生じゃなきゃ、嫌だ。どんなに魅力的なアルファがいても、それが湊先生でなければ意味がない。きゅぅと、お腹が切なくなる。
『遥くん』
録音された湊先生の声は、聞き分けのできない僕をあやすときに使う、柔らかな声だ。そうやってあやして、「いい子」と言われたい。
なのにからだは熱っぽさを増し、下着は濡れていく。試しにそっと触ってみたら、布越しにもわかるくらい濡れていた。
下着の中に手を入れてみると、べたべたとした先走りの感触がした。これでは湊先生に「悪い子」と言われても仕方がない。
「ん、せんせい、触って……」
朦朧とする理性は簡単に瓦解して、本音が口を吐く。先生の大きな手のひらでお腹を撫でて、性器を擦って欲しい。きっと湊先生の手のひらの中に、僕の性器はすっぽりと収まってしまう。それで先端から根元まで、ぐちゅぐちゅと水音を立てて愛撫して欲しい。
今僕の手は、頭の中では湊先生の骨ばった手のひらに置き換わっていた。でも湊先生が触ってくれたら、先生の手が汚れちゃうな、と理性の欠片が考える。
それもすぐに、本能に上書きされた。先生の手をべたべたと汚して、「悪い子」と言われたい。
『遥くん、『好き』だよ』
ゆっくりと言い聞かせるような声だ。録音なのに耳元で囁かれているようで、下半身がきゅぅとなる。僕からお願いしたことだけれど、湊先生は「好き」と言ってくれた。それが嬉しくて、嬉しいと下腹部が熱くなって、性器が重くなる。
「ん、あ……っ」
せんせい、好きです。
それは言葉にならないまま、僕は手の中を白濁で汚した。はくはくとした呼吸に、怠さが相まって後片付けもままならない。
『もう切るよ』という言葉を最後に、湊先生の言葉は途切れる。何度聴いてもそこで湊先生との繋がりが切れてしまうようで、泣きたくなってしまう。
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