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第13話

 寂しくて、僕はベッドの中でからだを小さく丸まらせていた。吐く息は熱いのに、からだも火照っているのに、意中の湊先生は僕に最低限以上は触れるつもりはないのだ。好きな人に素っ気なく扱われるのは、切ない。  扉がノックされる。「遥くん」と呼ばれた。咄嗟に身を起こすけれど、湊先生の姿はない。扉越しに声だけがする。 「僕は仕事に行ってくるから、留守番しててね。インターフォンにも出なくていいから」  それだけ言うと、湊先生の気配は遠ざかっていった。  しばらくして小さく、玄関の扉の閉まる音が聞こえた気がした。  湊先生はアルファだから、オメガの僕に何かないように精一杯気を付けてくれているのはわかっている。だから必要最低限しか触れないし、僕のお願いもきいてはくれない。 「でも好きなんです」  だから息もしづらいくらい苦しくて、胸が切ない。知らないリネンのにおいが寂しさに拍車をかける。  昨日は楽しかった。湊先生と食卓を囲むことは、今日も明日もできないだろう。 「また一緒にごはん食べたかったのに」 「今日は遥くんがいるから、奮発しちゃった」と照れた顔の先生が忘れられない。メタルフレームの眼鏡の奥の目が柔和に細くなっていた。たまに見せるあの顔が好きだ。 「あ、ティラミス」  昨日、「明日食べようね」と冷蔵庫にしまったティラミスを、今日湊先生と一緒に食べることはできないだろう。一瞬、勝手に家の中を歩き回ったらにおいがついて怒られるだろうか、と思った。でもトイレには行かなきゃいけないし、必要最低限なら許されるだろう。それにさっきも家の中を歩き回ってしまった。  ベッドから重怠いからだを引きずり出して、客間を出る。足元がふらつく。ふらふらと、キッチンにある冷蔵庫まで歩いていった。  冷蔵庫の扉を開ける。冷気がさっと流れて出てきて、熱いからだには心地よい。その中程の段にティラミスがふたつ並んでいた。片方に手を伸ばして取り出す。プラスチックの容器に入ったティラミスには使い捨てのスプーンが載せてあった。  冷蔵庫の扉を閉めて、そこに寄りかかるようにして、ずるずるとキッチンの床にじかに座り込む。ティラミスの蓋を開けて、使い捨てのスプーンを差し込む。食欲なんて全然なかったけれど、一口口に運んだ。 「甘い」  そしてちょっとだけ苦い。  本当は湊先生と一緒に食べるはずだったのに、食べられなくなってしまった。 「一緒に食べたかったな」  この熱を持ったからだが嫌だ。本来ならヒートなんて、来る予定はなかったのになんでこうなるのだ。  また一口ティラミスを口に運ぶ。手元がぶれて、淡黄色のクリームが下唇につく。昨日は湊先生が拭ってくれたのに、今日は自分の指で拭う。指先についたクリームを舐めた。「お行儀が悪いから、これは内緒、ね」と口元に人差し指を立てる湊先生を思い出す。 「湊先生、会いたいよお」  

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