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第3話※

 淡い光を発する間接照明が、部屋の真ん中で息をすることも忘れて無我夢中に舌を絡ませている晴人と百合斗の影を壁に映した。  ここは、簡素なキッチンと窮屈なシャワールーム、黒い革張りのソファベッドにサイドテーブルとその上に置かれたたまご型の間接照明しかない百合斗の仮眠部屋、もとい連れ込み部屋である。  晴人がこの部屋に足を踏み入れるのはおよそ半年振りのことだったが、以前来た時と何かが違うことに気がついた。改めて部屋を見回してみるが、特に家具が変わったというわけではなさそうだ。 「どうしたの? そんな知らないところに連れてこられた猫みたいに部屋を見回したりなんかして」  室内に視線を走らせる晴人をソファベッドに押し倒し首筋に百合斗は唇を這わせ、痕が残らない程度に吸ったり犬歯を肌に当てる。 「……んっ。なんか、前に来た時と雰囲気が変わった気がするんだが」 「そう? 何にも変えてないからハルの気のせいだと思うよ。それより、こっちに集中して――」  百合斗は食いつくような勢いで晴人の唇を奪った。  ぴちゃぴちゃと下品な音を立てながら貪り合うかのように舌を絡め合う。熱い吐息と微かに酒の味のする唾液が混ざり、晴人の口端から垂れる。  息継ぎのタイミングを逃していた晴人の頭が酸欠でふわふわしてきた頃、百合斗の右手が晴人の服の中に侵入してきて胸の突起を探り当てた。カリカリと引っ掻かれる刺激に晴人はその快感に身を悶えさせた。 「経験は少なくないはずなのに、毎回可愛い反応してくれるハル大好き」  晴人の顎のラインから舌を這わせ、耳朶(じだ)に優しく歯をたて百合斗はそう囁いた。 「んあっ。よ、けいなこと言ってないで……はやく……っ」 「はやく、何? ちゃんと何をして欲しいのか言ってくれないと分からないよ」  百合斗の右手で晴人の胸の突起を弄び、左手は二の腕をソファに縫いつけていた。  いくら遊び慣れているからと言っても、晴人の性格的にを口にするのは恥ずかしくてたまらない。  どうにか恥ずかしい思いをせずに百合斗から快楽を得るにはと考えた晴人は、たくし上げられた自分のインナーを噛み、自由な右手で百合斗の勃ち上がったソレをズボンの上から優しく指で撫で上げ、そのままズボンのボタンを外しゆっくりと空いた空間へと手を入れた。  下着越しにゆるゆると(しご)きながら、時々鈴口を人差し指で刺激する。  すると、ちょっと前まで余裕そうだった百合斗の表情が切羽詰まったものに変わった。 「今日こそはハルに可愛くおねだりして欲しかったのに!」 「俺はそういうのはしない。むしろ、お前がおねだりしてみろよ」  百合斗の指が止まり反撃の隙を見つけた晴人は、上半身を持ち上げ百合斗の鎖骨に吸い付いた。 「……ッ。僕にはマーキングさせてくれないくせに、ずるいなぁ」 「そこまで強く吸ってないから痕は残ってない」 「それは、それで寂しいかも。ね、挿れていい?」 「ちゃんと気持ちよくしてくれよ?」  晴人はそう言って百合斗のモノを扱っていた方の手で自分のズボンの前を(くつろ)げた。それを合図に、百合斗は晴人を起し、彼の背後に立ちズボンを下げた。晴人の後孔に指を入れると、そこはすでに柔く(ほぐ)れている。 「こんなに期待させていたのに、今日は後輩くんに邪魔されちゃったんだね。可哀想――」 「んあっ」  再びイニシアチブが百合斗へと戻った。晴人は無意識に艶めいた声を漏らす。  緩やかに出し入れされる百合斗の指が晴人いい所を焦らしながら刺激する。 「ゆ、り……、意地、悪しないで、い、挿れて――」  腹の奥が疼いて仕方がなくなった晴人は、先ほどまで感じていた恥ずかしさも忘れ、百合斗に挿れて欲しいと乞う。  百合斗はソファの引き出しからコンドームとローションを取り出し、慣れた手つきでゴムをつける。  蕩けた顔の晴人の視線が百合斗を急かす。  屹立にローションをたらし晴人の後孔にあてがった。馴染ませるように、スライドさせると晴人が急かすように腰を押し付けてくる。 「じゃ、挿入るね」  ぐちゅりと水音を立てて、晴人の後孔は百合斗の屹立を受け入れた。  晴人の口から、「ああ……ッ」と嬌声が溢れた。あまり声が出ないようにと、晴人は唇を噛み締める。 「ハルの声、聞かせて」  晴人の喘ぎ声がくぐもった物に変わったことに気がついた百合斗は、抽挿しながら右手で晴人の唇を開かせた。 「う、あっ……ふっ……」 「ハル、すごくっ……可愛いっ……」  扇情的な晴人の姿に興奮した百合斗の腰の動きが早くなると、晴人は体を仰け反らせた。百合斗は一層激しく腰を打ちつける。 「――--ッ」  耐えきれず達した晴人に覆い被さった百合斗は、晴人の口の端から垂れる涎を舐め掬う。 「先に、イっちゃうなんて酷いんだから――。もう少し付き合って――」  百合斗は最奥まで腰を押し進め、小さくグラインドさせた。  快感から逃れようとする晴人を押さえつけた百合斗は、晴人がつまらぬ抵抗ができぬよう再び激しく腰を打ちつけた。  晴人の後孔が窄まり、襞がゴム越しの屹立にまとわりつく。 「んんっ――」  百合斗が達すると同時に晴人の体から力が抜けてソファに倒れ込んだ。

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