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第19章ー第159話 衝動性の高い男
田口はもともとはそういう趣味があるわけではないが、保住を好きになってしまってから、そういう気持ちがよくわかってしまうのが怖い――。
「夜、拓 から電話ありました。田口さんが促してくれたから、連絡先も交換できて感謝しています」
「おれが言わなくても交換していただろう」
「そんなことありません。また嫌な部分が出てきて。逃げてばっかり。こんなこと言ったら、嫌がられるんじゃないかとか思ってしまうんですよね」
結局。十文字は、いつも始まれていないのだ。自分の中で完結して終わっていることが多いし。田口の目から見るとそう思うが、彼も気が付いていることなのではないだろうか。
「嫌になります。昨日は結構、頑張ったつもりですけど。結局――高校の時に拓が好きだった奴が同じ職場にいるみたいで。はは笑っちゃいますよね。おれなんか頑張っても、きっと二人の間には入れないし。久しぶりに出会って感じた思いを、彼に伝えることなんか難しいです」
「十文字」
「情けないです」
――がっかり。
そんな顔だ。田口にもわかった。
もどかしくて――保住が澤井と一緒にいる時、自分の気持ちをなかなかうまく言えなかった。しかし田口の場合は我慢できなくなって伝えてしまったが。
比較的、十文字寄りのタイプであることは自覚している。だからこそ切ない彼の気持ちは、重々わかるのだ。
「伝えてみたら」
「出来ません」
「十文字。前に進まないと」
「わかっているんですけど」
「怖い気持ちわかる。おれも同じだ」
田口はまっすぐに十文字を見た。
「おれも好きな人はいる。その人が別の人間と一緒にいると考えただけで、心が揺らいで気が気ではない。だけどおれがその気持ちを伝えたら、その人は困るだろうって。嫌がるだろうって思って、なかなか言えなかった」
「言えたんですか」
「言った。おれはお前ほど辛抱がない。我慢できなくなって。なりふり構わずに言ってしまった!」
十文字は笑う。
「田口さんって我慢強そうなのに」
「衝動性が高いのが、おれの性格だ」
「そうは見えませんけど」
「ある程度までは我慢するが、閾値に達すると、否応なしに爆発する。だから相手を傷つけることもあるのではないかと心配している」
「そうですか? そうは見えないけどな」
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