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第19章ー第161話 仲間入り
紙の捲れる音。この緊張感――。自分の書類を精査されているみたいで怖い。隣に立っている十文字はもっと緊張しているようだ。
時計の針は午後五時を回ったところ。定時ギリギリだった。
保住の最初の一言が怖い。田口ですらそう思った。
プライベートではなんでも話せるのに、職場では、やはり上司で先輩なのだ。隣にいる十文字は倒れそうだ。顔色も悪いし本当に限界である。
「しっかり」
「頑張れ」
心の中でそう繰り返し言葉をかけていると、保住が書類を机に置いた。
「まあギリギリだけど、よしとしよう」
「ほ、本当ですか?」
十文字は目を瞬かせた。
「頑張ったな。十文字。最初の物から比べると遥かにいい」
保住の笑顔は眩しい。谷口が口を挟む。
「因みに何点ですか?」
保住は「そうですね」と考え込んでから悪びれもなく言い放つ。
「そうですね。55点ですかね」
「田口より低っ!」
「いや、どちらもどちらだな」
渡辺は腕組みをして、ニヤニヤしていた。
「佐久間局長は出張だ。明日、朝一に企画書のプレゼンして、オッケーもらったら話を進めよう」
「は、はい!!」
十文字は田口を見上げた。
「田口さん、本当に本当にありがとうございます!」
「おれはなにも。十文字が頑張ったんじゃない。今日は、ゆっくり休んで」
「はい!」
「十文字の歓迎会は今週末にしましょうか」
渡辺の提案に保住は頷く。
「大分遅れたが、企画書が出来たら仲間入りの儀式が通例だ。歓迎会だな」
「ありがとうございます!」
ヘロヘロな十文字は笑顔だ。これで彼も仲間入り。
――そう。これで。
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