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第2話

…はぁ。 星一つ見る事のできない曇り空を眺めて小さくため息をつきながら 今日も人との関わりを最小限にとどめてくれた真っ白な相棒を顎まで下げる。 基本、1日中マスクは外さない。 風邪でもなければ花粉症でもないのだが、表情を読み取れなければ人はそれを関わりにくい人物だと捉え、少なからず苦手意識を持つそうだ。 馴れ合いのような事は苦手なので、 そんな理由で季節も何も関係なくマスクを着用するのが習慣となっている。 その結果、見事に効果覿面といったところだ。 入社から既に5年は経っている訳だが、歓送迎会や忘年会のような社員全員参加型の宴会でもない限り仕事仲間と飲みに出たことなんて一度もない。 …自慢するような事でもないが。 勿論始めの頃は、やれ同期会だの、やれ合コンだのと何度か声をかけられる事もあるにはあった。 だが、それを幾度と無く断り続けた結果、今では社内の人間と世間話すらしなくなったのだ。 まぁ、この類の誘いを断り続けるのはもう一つ、重大な理由があっての事なのだが。 上の人間の企画する宴会や会合は、年配の社長や専務をを気遣い、椅子に座ったり立食形式のそれが多い。 だが、若者の企画するものとなれば、そううまくはいかなくなる。 座敷だ。 それが問題なのだ。 俺はこの今も現在進行形で、人には言えない秘密を抱えている。 それはこの先も、可能ならば家族や身内以外の誰にも知られたくない事だ。 ──さて、ここで話を元に戻そう。 仕事だろうと私生活だろうと、1人でいることに不便を感じた試しは残念ながら一度もない。 どれもこれも自分の望んだ道なのであって、 26年かけて作り上げてきた今の自分に特に後悔もしていない訳だ。 孤独は寂しいだなんていう者もいるが、自分にとって1人の時間というのは 安心、落ち着く、リラックス出来るという最高の三拍子が揃う空間である。

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