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第10話

先に会計を済ませた法月は、店内に設置されたイートインスペースの一番広い席を取って待っていた。 これがモテる&上司に好かれる男というわけか。 ここまで来れば流石に俺も納得がいく。 そんな法月と対角線上に座り、器用に詰められた袋を探った。 最初に取り出したのは、俺にとっては食事よりも重要なもの。 実は弁当と一緒に買っておいたんだ。 俺の永遠の相棒。その名も”使い捨てマスク”。 「おい、法月。教えてくれるんだろう。」 「んー…。そうですね。朝は確かにそう思っていたんですが気分が変わりましてね。今日はそのまま過ごしてみてはどうでしょう。」 何と言う事だ。まさかの裏切りに言葉も出ない。 開いた口が塞がらないとはまさにこの事。 …しかしながら腹が減っているのも事実。 店員のご厚意で数秒だけ温めてもらったパンの袋を破り、空っぽの胃袋に落とす。 それもその筈。今日はマスクの次に俺を作っていると言っても過言ではないエナジードリンクが、雨に襲われて飲みきれなかったのだ。 あの炭酸、あんなスリムなボディでありながら意外と腹持ちがいい。 お茶2本分の値段なだけあるな。 飲むと飲まないじゃここまで違う。 早々に袋を空にし、未だ両手にフォークとスプーンを持ってランチを嗜む法月の目の前で 意を決し、マスクの封を開けた。 まずはメガネを外しておこう。 いつもの感触。柔らかいゴムが耳の裏を守ってくれていい感じだ。 そして上から、恐る恐るメガネをかけ── むわあああ だめだ。 レンズの下半分は既に真っ白状態だ。 人が孤独に戦う姿見て、優雅にパスタを食していた法月は肩を揺らすだけでなく、唇までもを震わせている。 おい、堪え切れてないぞ畜生め。 王なのか。兵士が次々にやられていく様を嘲笑う王なのかお前は。 どう抗ってもメガネには敵いそうもないそれを渋々外すと、徐々にクリアになっていく視界。 その正面で、法月は勝ち誇ったように満足げな笑みを浮かべた。 「うん、やはり僕の目に狂いはありませんでした。ずっと見ていました。竹内さんの事を。」 「は?」 「……ふふ、こんな感覚なんですね。」 何やら楽しそうに笑っているが 独り言を連ねてそういう顔すると、変なやつだと思われるぞ。 あぁ、もう遅いか。

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