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第63話

気持ちを落ち着けようと、届いていた取引先からのメールに目を通したり、明日のスケジュールを見直したり。結局仕事が早く終わったところで暇潰しも仕事なのだと気付いてしまえば、いかに俺が社畜であるかを痛感するばかりだった。 しかし、それすら見飽きると今度は本気で何も無い。待てど暮らせど佐々木は来ない。 まぁもし今が真冬の雪がちらつくような季節であったならば、外は暗闇一色なのに一向に佐々木のアルバイトが終わらない事を、今よりはるかに腹を立てていただろう…なんて。 こんな歳で、男の高校生をまだかまだかと楽しみに待つ奴がいるか。自分で自分が気色が悪いよ。なんだってんだ。 普通でいいのに。普通でいる事が、この世で最も楽な生き方であるというのに。 俺の周りがおかしな奴らばかりなせいだ。 誰もが目を惹く存在でありながら、頬を赤らめて俺を好きだなんてふざけた事を言う法月と 一回りも年上の男の寝込みを襲っておきながら、自分の好きな男の夢を見て身体の反応に正直だった佐々木と。 そりゃあこんな奴らに囲まれていれば俺の一般的な思考こそ狂いそうになるものだ。 仕方がない。俺は別におかしくなんてない。少し影響されかけただけ。すぐ正常に戻るはず。……きっと。 ぐるぐると頭の中をめぐる考えは、何処までも正解を導き出す兆しが見えない。 それどころか佐々木のアルバイトが終わる時間が迫るにつれて、顔は熱い気がするし、胸は苦しいし。いよいよ不健康な生活により身体にガタが来始めたのではないかと心配になるくらいだ。 そうだ、まだ時間はあるし風呂にでも入ろう。 シャワーで済ませてしまいがちな俺だが、たまには湯船にでもゆっくり浸かって。 一度落ち着く時間も必要だ。 時計をみても20時少し前。22時を過ぎた日も、佐々木はレジを打っていてくれただろう。寝コケて逆上せでもしない限りは迷惑をかけることも無い。 …って、俺はどうして佐々木のシフトまで把握しだしているんだ。本当に、心の底から気持ち悪い事この上ない。 適当にそこらのスウェットを手に取り、浴室へ向かった。 今更サイズだとか格好を気にするつもりもない。笑いたきゃ笑えばいいさ、はっはっ。

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