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第113話

咄嗟にそれを取り出し画面を見れば、差出人は──。 “さっきはごめんね、あ竹内さん” “おれの事きらいになんないで” “あっちもどっても、また会ってください” 伊織という名から立て続けに送られてくるメッセージ。普段のそれと違い、キラキラした絵文字やにこにこした顔は一つも付いていない。 平仮名、多いし 誤字も珍しい。 竹内の前の“あ”はもしかしたら、下の名を打とうとして辞めた形跡かもしれない。 ───あぁ、佐々木…佐々木だ。 よかった。また、佐々木に会える…。 『色々と誤解させてしまった事があるんだ。』 『俺も会いたい』 『本当は、佐々木の事が好きで』 早すぎる既読は、とか 返事のタイミングを、とか そんなところには到底頭が回るはずもない。 震える手で何度も打ち込み、消し、また打っての繰り返し。 何を返せば正解だろう。 この気持ちをどう伝えたら、今度こそ誤解を招くこと無く納得してもらえるのだろう。 考えて、考えて、考えて… 『それより、何でここに居るんだ?』 結局そこに落ち着いた。 何故だ!!佐々木がくれたメッセージへの返事にもなっていないじゃないか。 これじゃあまた嫌われてしまう。今度こそ、二度と会えなくなってしまう……。 “そこかよ笑 最近返事来ないから言えなかったんスよー?だから内緒〜〜” “ちゃんとお土産買ってくねっ” キラキラ、ニコニコスタンプの連投に、一気に全身の緊張がほぐれた。 いつもの佐々木だ。それを知ればもう、キーボードの上を走り出した指が止まらない。 『土産話で十分だ。楽しんでこいよ 俺は出張で来てる。謝りたい事も沢山あるから、また会いたい』 恐らくこのアプリを利用し始めて、最も長文のメッセージ。 簡潔な文章を作るのはやはり難しいな。佐々木に伝えたいことが多すぎて、上手く言葉に出来ない。 『俺も会いたい!!ありがと!!』 今度は、ちゃんと送ることが出来た。 会いたいと、伝えることが出来た。 まだまだ道のりは長いだろう。これは解決へのほんの1歩に過ぎない。 会えばまたこってりと絞られるだろうし、そこで俺が何か間違いを起こせばいくら優しい佐々木でも許してはくれないだろう。 それでも、今は。 「……はは。凄いですね、佐々木君は。」 「え?」 「竹内さんのお顔が、こんなに忙しなく色を変える所初めて見ましたよ。敵いませんね。」 俺の手元を指さす法月は、相変わらず頬を手で支えたまま可笑しそうに笑った。 ハッとして口を押さえたが、だらしなく緩んでいたそれを今更無かったことには出来ない。 「……俺、は…佐々木の事が…っ、。」 もう自分の気持ちを隠す事など不可能だ。

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