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第114話
言ってしまったな。
遂に、他人に。
「佐々木の事が…、好きなのかもしれない。」
あの後、真っ直ぐに俺を見つめる法月に何とか絞り出したその台詞を
かも、ではないでしょうと優しく諭されて言い直しまでさせられたのだ。
抱き始めた気持ちは確信へと変わり、俺の言葉一つでコロコロと顔つきを変える佐々木から目を離せなくなっていた。
可愛らしい、面白いと思っていたそれらは、いつしか全て“愛おしい”とさえ感じるようになり、彼の表情や声色一つで情緒は乱れ、冷たい態度を取られれば呪いのように全身を蝕んだ。
この世の終わりとまで言っていた割に、終始落ち着いた様子で話を聞いてくれた法月には感謝しか無い。
俺がアイツの立場ならば、まず冷静ではいられないだろうに。同じ歳でありながら、精神年齢は何処までも大人だ。
俺が、幼稚すぎるだけだろうか。
貸切状態の露天風呂に浸かり、白く霞む景色を眺めてそんな事を思う。
法月もそろそろ来る頃だろう。
なんでも、俺と脱衣所で並ぶのは事故のリスクがあるだの何だので、少し時間をずらしてくれと言って聞かなかった。
記憶に新しい法月の事故現場というのは、元はと言えば俺の身勝手な行動が最大の要因だ。焦らず来いとだけ伝え、俺は着替えを取りに自室へと戻ったのだった。
その時、カタカタと静かに開く引き戸の音を聞き、足音のする方へと振り返る。
タオルを片手に微笑む法月は、脱いでもやっぱり想像以上の美しさだった。
大人の色気とはまさにこの事だろう。ちょっとダダ漏れすぎではあるが。
シャワーヘッドから曲線を描いて流れる水が、程よく鍛えられ、締まった背中を濡らす。長身でありながら、一歳無駄な箇所のない美麗な身体。
濡れた前髪をかき上げる仕草は、まるで成人向け有料チャンネルでも見ているのかと思う程に艶めいていて。
高い鼻の頭から滴る雫は多分、俺や他の誰かなら鼻水みたいだと笑われる対象になりかねないと言うのに、この男は自らの魅力を引き立たせるアクセサリーになるのだからもう意味がわからない。
同じ人間でここまでの差があるなんて、頭を抱えたくなる始末だ。
「遅くなりました。隣、失礼しますね。」
「あぁ…。」
何の気無しにふと横を見た時、いかにも女性が喜びそうな立派なサイズのものが目に入ってしまい、ズルりと鼻先辺りまで顔を沈めた。
通常でそれか。そっちまで男らしいのか。お前に弱みは無いのか。本当にお前は人間か。
「…?何を、不貞腐れてるんです。」
「ブクブクブク……。」
なんだ。つまらんな。
どうせなら黒ミル貝みたいなのを期待していた。
不審がられない程度に、そっと両手で自身を隠す。
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