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第119話

転職先でまず一番初めに目についたのは、若作りをした女性社員達。 あの仕事をしていれば嫌でも養われてしまう女性を見る目というのは恐ろしく、界隈でも特に美しかった優里を見慣れた僕には、苦笑いするしかなかった。 そんな中での竹内さんとの出会いだ。 彼は無口だが、視野の広い人だった。 困っていそうな社員を見つけては声をかけ、だが教える事は苦手のようですぐに自分が代わりにこなしてしまう。 断りきれず、助けてばかり。デスクの端に積み上げられていく資料は、どれもこれも人から頼まれたものばかり。 どうにも気になってしまった。 はじめはお約束の同情心かと自身に呆れたが、そうでは無いと気付いたのは、嵐の吹き荒れるあの日。 普段と違う竹内さんに、ドクンと胸が跳ねた。 そこでようやく、彼を“そういう”対象として見ている事を自覚したのだ。 こんな気持ちは生まれて初めてで、それまでまともに話した事も無かった彼に少しでも近付きたくて、前へと踏み出してしまった足は止まらなくて。 ごく一般的な企業に勤める彼に、男の自分を好きになれなどと言うつもりは一切無い。 むしろ、恋愛対象が異性であろう竹内さんならば僕の気持ちを重く受け止めてしまう心配もなく、自分の為だけの恋が出来ると思ったのだ。 ──そんな彼が、まさかコンビニでアルバイトをする高校生を好きになるとは予想外だったが。 ただ、僕は2人の邪魔をしようとは思わない。 竹内さんには竹内さんの人生がある。 サチがサチの人生を歩んでいくように、優里が優里の人生を生きるしか無かったように。 僕は人の生き様に文句をつける権利もなければ 人の人生を狂わせて良い理由もないのだ。 初めて好きになった竹内さんが、一番良い形で笑顔でいられるように 僕は今日も、叶うことのない恋心を抱こう。 “好き”を教えてくれてありがとう。 自分のものには決してならない、もどかしさや切なさを教えてくれて、ありがとう。 なんてそんな事 たとえ竹内さんだろうと、教えるつもりはないんだけどね。 「僕の話はいいじゃないですか。 それより、竹内さんの事もっと知りたいですよ。」 「改めて教える事なんかもう無いぞ…。」 「っふふ、まあ確かに…。 高校生を好きになるわ出張中にその子とホテルに入るわ、挙句これでもかと言う程身長のかさ増ししていたわけですからねぇ…。」 「おまっ……もうくちきいてやらん。」 「勘弁してくださいよ〜竹内さん!」 「ふんっ。」 広い風呂で、局部を見せない見事な動きで縦横無尽に駆け回る竹内さんを追いかけていれば 思い出しかけた昔の痛みは、いつの間にか何処かへ消えた。

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