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第120話

離れれば寄ってくるし、逃げれば追われるし この男は本当に何なんだ。 しつこいにも程がある。 先程聞いてはいけない事を聞いてしまったのか、少しうかない顔をしていた様に見えたから。普段通りの法月に戻ってくれたのは良い事だろう。 にしても、だ。 こいつ、俺の身長をバカにしやがった上にそれをわかって澄まし顔で追い上げてくる。 その嫌味のように長い手足を伸ばせば俺など一掴みで捕らえられるだろうに。 そう言うところが、人のことおちょくってるって言うんだよ!! と、側面を蹴り上げて法月から離れようと足に力を入れたその時だった。 「ぁい゛ッ…。」 「え?た…竹内さん?!」 「ブクブクブク…ごぽぽ、」 今度ばかりはわざと潜ったわけではない。 水中で何なく動けていたせいで頭から抜けていた足の痛み。折れてはないが、捻挫かなにかしてるな…これは。 それに頭もぼーっとして来たぞ。 風呂に慣れてないんだよ、シャワー派なんだよ俺。 ここの温度はわからんが、多分家でこの間入った時よりも熱い気がする。そんな所に長い時間入っていたら……あぁ、だめだもう溶ける。 茹だってふやけて崩れる。 ざぱんと飛沫が上がり、一番最初に目にしたのは 体温が上昇し、少しだけ顔を赤く染めた法月の真っ青という表現が相応しいイケメンフェイスだった。 赤いのに青いってなんだよ。 というか、それより… 「逆上せた…すまん。」 「だと思いましたよ。顔真っ赤ですし…。」 法月には情け無い姿ばかり見られている気がするな。 いや、むしろまともな所を見せた事があるかすら謎だ。こんな俺の何を好きになったのか。…変わり者の考えを理解するのは不可能だ。回らない頭をこれ以上余計な事で悩ませるのはよそう。 法月は、俺を抱き上げると浴槽の淵へと座らせた。 わざわざ壁のある所まで運ばれたのが、チビは持ち運びも楽ちんだとアピールされたのではなく俺が倒れないよう持たれかかる場所を提供してくれたのだと分かれば、おのずとイライラは収まっていく。 タオルも桶も見当たらないので、仕方なく内股で両手を前に添えた。 「別に扱いたり咥えたりしませんからご自分の楽な体勢を取ってくださいよ。」 「お前はたまに本当にわからんから無理だ。」 「…はは、信用無いですねぇ。」 そもそも、信用ある無いの話ではない。 今この状況、俺は淵に腰掛け、法月は湯船に浸かったままだ。俺の息子とお前の顔がお隣同士なんだぞ、嫌だろ。 …嫌じゃ、無さそうだな。 だからといって防御兵を退けることはしないがな!!

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