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第122話
脱衣所まで運ばれた身体は、やはりずっしりと重みを感じる。
熱を孕んで、鼓動に合わせて頭の奥が響いて。
まるで自分じゃないみたいだ。
「タオルの上、座りましょう。」
「…ん、悪い。」
器用な足捌きで見事バスタオルを床に広げた法月に感心する間も無く、背中に回っていた腕が解けた。
自分よりも俺を優先してくれる法月は、びしょ濡れのまま俺をタオルで拭き始める。
手の自由は効くのだから、それくらいは1人でも出来るのだが…嫌な顔一つせず、というより嬉しそうにすら見える顔つきで、せっせと俺の世話をしてくれるものだから
ここは甘えておく事にした。
が、それが失敗だったと気づくのはそれからすぐの事だ。
「竹内さん、ガードしないでください。」
「ソコは自分で拭く、から…っ。」
「今の今まで甘えていた人が何を言っているんです。」
「ぐっ……。」
立ち上がれば頭一つ分の身長差はあるであろう法月に、力で敵うはずがない。
力んだ手は小刻みに震え、それが更に法月の闘争心を煽っている気さえした。
…さてはコイツ、気付いていたな。
何処までが計算なのか、本当に掴めない男だ。
確かにほんの数秒前に思った所だ。
折角楽しそうにしているのなら、俺の手間も省けるし丁度良いか……なんて考えた俺が間違ってたよ!!
「隠している方が…っ、暴きたくなるものですよ竹内さん……!!」
「ひ、人の身体を……ぁああばこうと…するなぁッ!」
法月の手は、タオル越しに俺の揃えた両手を掴む。初めからこれが狙いか?
首から順に、丁寧に
抱きしめるような体勢で背中、腰
法月の風呂上がりの優しい香りを堪能している隙に、遂にここまで辿り着いてしまったのである。
何とか隠していたのに…、くそう。
ん?いや待てよ。
順番に下っていっているのだから下半身はどこも手付かずだ。俺にはまだ逃げる術が…ある!
「脚っ…まだ、濡れてるから……そっちを先に…。意識もはっきりしてるから俺も手伝うよ…。」
「……ちっ。わかりましたよ。」
今ちって言ったな。舌打ちしたな。
渋々といった表情で足元へタオルを滑らせる姿に、ホッと胸を撫で下ろした。
くすぐったい。
ただでさえ肌触りの良いふかふかのタオルなんだ。もっと力を入れて貰わないと…ムズムズする。
内腿や膝裏など、皮膚の薄いところに限って何度も触れて。上司へのセクハラもいいところだ。
血色の良い膨れっ面を睨みつつ、首に掛けられたフェイスタオルで自身を覆ったその時。
法月の顔つきが、ふと険しくなる。
「ここですね、足首。
くるぶしのところ、少し腫れてますよ。」
「あ、あぁ…やっぱりか。」
「後で湿布貼りましょう。痛めたのは片方だけですか?」
「お、う…わかった。貼る。片方だけだ。」
これは計算か…?
いや、それにしては顔が大真面目だ。という事は無自覚なのだろうか。
どちらにしても、そろそろ勘弁してもらえないだろうか。貸切ではないんだ。いつ誰が入ってくるともわからないんだ。
だから頼む。お願いだから──。
「あんまり股を…開くな!!馬鹿野郎!!!」
ばちーんっ
「いッッ……。」
平たい音が端の端まで響き渡った。
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