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第132話

多分俺は生まれた頃から集団行動というのが嫌いだった。 人混みも満員電車も嫌い。だから転校する前の電車通学は毎日ゲロ吐くんじゃねーかってくらい気分が悪くなったし、今の学校に移ってからはちょっと遠いと思いながらも自転車かっ飛ばしてる。 そんな俺にとって、久しぶりのギッチギチ状態。 スーパーの特売でおばちゃんがビニール破れるまで詰め込んだ胡瓜みたいに、僅かな隙間を探しては敷き詰められる。 今朝は何とか同室の友人を鬼電で起こして、教師にバレずに部屋へ戻ることが出来た。 寝起きで不機嫌なそいつよりお通夜みたいな顔してた俺に怒る気力も無くなったのか、自分用に買ってあったらしいコーラを寄越して相談にも乗ってくれたりして。 べそかいて指先ブルブル震えながらメッセージ入れたとか、暁人さ…あーいや、竹内さんには絶対に知られたくない。 そんな俺は、現在その大嫌いな集団行動中である。 もしも竹内さんが返信をくれなかったら多分…いや、絶対にバックレていた自信がある。それくらい俺の生き方を左右する存在なんだって事、あの人はもう少し自覚してほしい。 可能なら、三日月だか海苔だか知らねえけどあんな部下諦めて俺だけ見てほしい…と、思う。 「あ、電車来たぞー。」 「え?ココに居る奴ら全員乗んのアレ。無理じゃね?次の待とうぜ。」 「いやこれ逃したら30分後だって。」 田舎なんて糞食らえだ。 レンタルの自転車使って走る萩の街並み。宮島行ったりもみじ饅頭食ったりと、楽しい奴らは楽しいんだろうが日本の歴史に興味のない俺は退屈で仕方なかった。 2、3上の学年まではもう少し手前に泊まって関西最大規模の某遊園地で遊び呆けていたらしいが、当時ウチの学校で一番治安の悪い生徒集団がそこで問題を起こしただか何だかで、翌年から場所が変更になったらしい。 そいつらシメてやりたい。 ま、会えると思ってなかった人に会えたからマイナスばかりでも無いけれど。 多方面から訪れている観光客らしき大人や、俺達のような修学旅行生が賑わう駅に、鈍行の小さな電車が停まる。 予想通り、皆して一斉に乗り込むもんだから元々乗ってた人達も迷惑そうに顔を顰めた。 ぎゅうぎゅう詰めになりながら、何とか呼吸を確保。こういう時、身長が高いというのは結構便利だ。竹内さんの外出モードの時には敵わないけどね。 俺の肩にも頭が届いてない同班の女子が流石に可哀想で、というより何となく竹内さんのお家モードを思い出して、ちょっとだけ庇ってあげた。 そんなこんなで電車は軋みながら揺れ始め、どこか少しでも空いている場所はないかと辺りを見渡す。 と、見覚えのある黒髪を見つけてどきりと胸が鳴った。 間違いない。竹内さんだ…! 部下とラブラブ旅行というのはどうやら嘘だったようで、メッセージを貰った通りスーツ姿の二人組。 竹内さんが何を話しているかまではわからないが、その分マスクをしていない相方の口の動きをじっと眺めた。 “ご自身の靴の高さ……” “バランスを崩し…” 手まで握らせて、竹内さんも何でもない顔してスマホ見せて。 あいつら…マジで何してんの。 だがそれよりも心臓に杭でも打ち付けられたかのような衝撃を覚えたのは ──あのクソチャラ男が、竹内さんの靴の秘密を知っているって事だった。

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