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第133話

あの野郎、竹内さんの秘密…知ってんな。 キャリー持ち上げてやったのも多分、この満員で揺れる中バランス崩したら危ないだろって気遣いだ。 俺は流れで竹内さんの家に入れてもらった時知った訳だけど、そうじゃなけりゃ絶対に気付かないままだった。 仕事で来ていたから別の部屋だったんだって解釈は間違っていないと思うが、それでも同部屋に居座ったり…あのまま露天風呂一緒に入ったりしたのかな。 酔っ払っていた昨日の夜はどうだった? 俺にしたように、泥酔した竹内さんはアイツにもベタベタくっついてたのかな。 酒の味が染みた氷を口移しとかしたんだろうか。 緩くなった襟から胸元を覗き込んだり、はだけた裾から生足を拝んだりしたんだろうか。 そんな事してたら…今度こそ俺立ち直れないよ。 暫くじっと睨み続けていたものの、彼らが俺の存在に気がつく事は無くて。 はじめより呼吸がしやすくなったと思う頃には、2人仲良く改札方面へと向かっていく所だった。 自由が効かないって意味でも、やっぱり集団行動は大嫌いだ。 好きな人がこんなに近くにいるのに、今の俺には追いかける事すら出来ない。 「伊織、まさか体調悪い〜?酔った?」 「…あー、わり大丈夫。」 自分でも気付かないうちに歯軋りを繰り返しては、吊り革が千切れるほど捻り上げていた。 ポケットの中でクラスのグループ通知がひっきりなしに振動を続ける。 もしこのスマホで竹内さんを問い詰めれば、素直に説明してくれるだろうか。 あの口ですら説明下手な竹内さんが? ただの雑談の返信にも困って、既読をつけてもなかなか送ってこれないような人が? それにアイツだって…見てるかもしれないのに? 見せてたスマホは仕事用?それとも個人用? どんな理由で見せたの? 本当はやっぱり、朝返してくれた内容は嘘で恋人と旅行中だった? 俺と気まずくならないように仕事だって嘘ついただけ?距離が近くても怪しまれないようにスーツだったとか? 俺が送ったメッセージ見せて笑ってたのかな。 あのガキ俺達の嘘信じてるよって?アイツもグルだったならどうしよう。俺めちゃくちゃダサい奴じゃん。 竹内さんがそんなことするような人じゃないってのは、俺だって一応信じているつもりだ。 だけど、所詮俺の知ってる竹内さんは夜まで仕事頑張ってコンビニに煙草を買いに来るリーマンでしかないって事。 あとは自分のこと強く見せたくて身長盛って、すぐに本音が出ちゃう口を隠す為にいつもマスクつけてるって事くらいだ。 隠し切れてもないけれど、そもそも隠し事の多い竹内さんが、まだ何か隠していたとしても何も不思議じゃないんだ。 疑いたくなくても、頭が妙にネガティブな方向にばかり働く。 あとどれくらい頑張れば、竹内さんは俺だけを見てくれるようになるだろう。 そればっかり考えて、腕を引かれて電車を降りた。 くっそ。早く、帰りたい。

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